Victor TD-V707


  
Victor TD-V707

 199? 年製造。定価は 69,800 円です。Victor のカセットデッキの人気モデルといえば TD-V931 ですよね。この TD-V707 は TD-V931 亡き後の Victor のハイエンドモデルとして 発売されていたデッキです。ただ、その後 HMV シリーズで TD-V1 という 90,000 円 のデッキが発売されますが・・・。時期的には SONY の TC-K222ESA と同時期のモデルで、 これもまたコストパフォーマンスが高いデッキと言えるでしょう。何と言っても 6 万円台で 録音・再生ヘッドが独立型のデッキはこのモデルしかないです。独立型と言っても Nakamichi の ように、録音ヘッドと再生ヘッドが別々のカセットハーフの小窓に入るような独立型ではなく、 見た目はコンビネーション型です。でもそれぞれ独立して調整できるようになっています。 機能もソニーより凝っていますし、いいデッキだと思います。でも、どうしても TD-V931 と 比較されてしまい、人気はイマイチですし、web 上でもあまり詳しくは紹介されていないようです。 なので、ここで紹介していきたいと思います(といっても詳しくはないですけど)。

 それとは別に、ローディと同じ 707 の型番が好感が持てます。

 SONY の TC-K222ESA を買ってもらった頃は、なぜか SONY が一番いいと思っていたので SONY を買ってもらったのですが、今考えるとこの TD-V707 も選択候補にあって良かった のでは・・・と思います。当時はこの価格帯のデッキも充実していましたね。

 わたしが持っているのは、H/O で回転がおかしいということでジャンクで売られていたもの。 しかし見た目はとっても綺麗、ほとんど使われずダメになったという感じで、2,000 円だった と思います。「これは復活させてあげなければ・・・《なんてバカなことを思ってその場で 買って帰ったのでした(笑)。

 帰って動作確認してみれば、確かに回転ムラが凄まじいです。でもこれを捨てるのは もったいない。ということでそのままメーカー修理に出しました。原因は SONY のデッキ の定番故障と同じ、DD モーター制御回路の実装コンデンサ。やはりこのコンデンサは 共通して弱い部品なのですね。修理はキャプスタンベース一式丸ごと交換されて 帰ってきました。基板だけ交換でいいんじゃないの?と思ったのですが。修理代で 1 万数千円 掛かりました。もう手放せません?(笑)。

Victor TD-V707

 この頃の Victor お得意のアークベースが採用されています。振動対策のための木製の板です。 デッキの重心が下がることで安定性も増すというものです。機能はイコライザー切り替えが ないことを除いて TC-K222ESA とほぼ同じ。CD ダイレクト入力あり。HX PRO の ON/OFF 切り替え あり。余談ですが、HX PRO を ON/OFF してもわたしの耳では変化が分かりません・・・。
 録音ボリュームは大型重量級。感触もいい感じです。dB ステップ目盛があるところに ビクターらしさを感じます。 ディスプレイの感じも TC-K222ESA に 似た構成ですが、Victor デッキの特徴はやはりデジタルピークの数値表示ですよね。
 それから、再生や録音ボタンの上に小さい文字が書いてあるのが分かるかと思いますが、 他メーカーのデッキと違い、テープ録音編集のための細かい機能が搭載されているのも Victor のデッキの特徴です。例えば、録音時間残量表示や、録音した中で一番録音 レベルが高い部分をサーチしてくれるといった機能。カセットデッキが充実していた いい時代です・・・。

Victor TD-V707

 カセットはハーフシェルスタビライザーでがっちり固定されます。カセットドア周りもしっかり していますね。SONY よりもガタツキ感がないように思います。もちろん、メカニズムはカセット ドアに書かれているように、パルスサーボダイレクトドライブモーターによる クローズドループデュアルキャプスタンです。

Victor TD-V707

Victor TD-V707

 天板を開けた状態です。まず目に飛び込むのは銅メッキされたシールドボックス。 SONY とはまた違う音質向上への手法です。6 万円台のデッキには贅沢なような。 各種部品・基板取り付けネジも銅メッキです。このシールドボックスを外すと回路とご対面です。

Victor TD-V707

 天板の後ろには 1 枚鋼板が貼り付けられており、ここにも制振対策が施されています。

Victor TD-V707

 電源回路部です。見た目の印象は TC-K222ESA に劣りますが、音響用がしっかり使われています。

Victor TD-V707

 音質劣化を防ぐため、録音ボリューム本体は入力端子の直後に配置され、ボリュームつまみとは 長い棒で連結されています。CD ダイレクト入力切替スイッチも入力端子の近くに配置。 好印象ですね。

Victor TD-V707

 バイアス回路と HX PRO 部分です。

Victor TD-V707

 再生回路と録音回路です。左右対称で綺麗に並んでいます。

Victor TD-V707

 メカを後ろから。この頃の DD メカは似たように見えてしまいますね。上側のパネルが腐食 しているのは、そうなりやすいのでしょうか。

Victor TD-V707

Victor TD-V707

 ヘッド部です。ビクターお得意のファインアモルファス。巻線は PC-OCC です。 コンビネーション型ながらも録音ヘッドと再生ヘッドが離れているのが分かるかと思います。 解説図のようにセパレーターを両ヘッド間に設けることで、磁気的および電気的クロスフィールドを 排除しています。 ヘッド周りもしっかりしていて頼もしいです。SONY TC-K222ESA と同様、メカおよびヘッドベース 共に亜鉛ダイキャストを用い、振動対策が施されています。このデッキは本体もヘッド周りも 購入時にとても綺麗でした。ピンチローラーも修理の時に交換しています。まだまだ 大丈夫です。

 音は、SONY と同じく自己録再は文句なく、バランスのいい素直で安定したな音は好印象です。 でもですね、やっぱり Lo-D のデッキと比較してしまうと、大人しいんですよね。 バブル期のデッキでもあり、値段に似合わずしっかりした造りのデッキです。TD-V931 を 大事に使っている人はたくさんいると思いますが、TD-V707 に思い入れのある人はあまり いないと思いますので、大事に使っていこうと思っていましたが、機材整理のため手放しました。 しかしこのデッキもまた、大事にお使い頂ける方のところに行ったので、よかったと思います。

TD-V707 特性
項目 特性
録音再生ヘッドPC-OCC 巻線ファインアモルファスヘッド
消去ヘッド2 ギャップフェライトヘッド
モーターキャプスタン:パルスサーボ DD モーター
リール用およびメカ駆動用:DCモーター各 1 個
ワウ・フラッター0.022%(WRMS)±0.05W peak
周波数特性15~21,000Hz±3dB(EIAJ)
SN比(メタル)56dB(DOLBY NR OFF)
ひずみ率(メタルテープ)315Hz、0UV,3 次高調波ひずみ率 0.6%
外形寸法幅435×高さ143×奥行335mm
重量7.6kg


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