PIONEER T-07S


  
PIONEER T-07S

 1990 年代製造。定価は65,000円です。パイオニアとしては自社製メカを搭載した 最後のデュアルキャプスタン機であり、 純アナログ3ヘッドデッキとなったモデルです。この頃のパイオニアはコンポーネントにおいて ワイドレンジ化を進めていた頃で(今となっては懐かしい)、カセットで周波数帯域の上限を 30kHzまで伸ばした T-1100S などが発売されました。事実上これらの後継機となった T-07S もその系統を受けており、周波数帯域上限を 25kHz まで伸ばし、当時高級デッキには標準となっていたドルビーSを搭載 していました。

   普段は新品を滅多に買わないわたくしですが、このデッキは1998年に新品で買いました。 一台はドルビーSを搭載したデッキを持っておきたいな・・・と思っていた折、この T-07S は わたくし的に魅力的だったFLEXシステムを搭載していたこと、そしてなにより安かった (34,000円くらいでした)ことから、思い切って買ったものです。買って正解だと思っています。

PIONEER T-07S

 T-1100Sなどに比べれば安っぽく感じてしまうかもしれませんが、わたくし的には非常に いいデザインだと思います。センターメカを挟んで右側は基本操作ボタンや各種つまみ類、 左側は表示部と付属機能の操作ボタン類でうまくまとまっていると思います。メーターは レンジが変えられる2モード選択可能ですし、もちろん表示のオン・オフもできます。 カウンターは通常のリニアカウンターに加え、再生・録音時間や残量表示もできます。 4段階でテープの種類を設定できるので、時間表示はかなり正確です。フェードアウトの タイミングが楽に分かります。MPXフィルターもしっかりオン。オフできます。

PIONEER T-07S

 電源周りの様子です。トランスは撮り忘れました。パイオニアは他のコンポーネントでも あまり大きなトランスは使わない傾向がありますよね。T-07Sも同じです。

PIONEER T-07S

 録音ボリュームのすぐ後ろにあるのが再生回路部分です。オペアンプはJRCの4580DDです。

PIONEER T-07S

 FLEX(Frequency Level EXpander)システムの部分です。これは、経年劣化やアジマスずれ等で高域が落ちているテープ の音を解析し、その高域が減衰した量を自動的に最適に補正してあげるものです。 トーンコントロール等で単純に高域を持ち上げるのとは また違うので、実際その効果は(わたくし的には)絶大で、補正が効いているときも 特に違和感なく聞くことができ、大変魅力的な機能です。ただし元々の テープの高域の落ち具合にムラがあるとFLEXが働いたり働かなかったりするので ちょっと違和感が生じます。効くまでのタイムラグもちょっとありますが、それはしょうがないですね。

PIONEER T-07S

 パイオニア独自の XD FLAT( eXtended Dinamic range Frequency Level Auto Tuning )システムの部分です。低域(400kHz)、中域(3kHz)、高域(15kHz)の 3つの周波数ポイントで自動的にバイアス・感度・イコライザーをテープに合わせて 調整してくれるのが普通の FLAT システムですが、XD は更に高域録音特性を伸ばすための バイアス制御を行います。動作状況はディスプレイに表示されるので安心感があります。

PIONEER T-07S

 バイアス回路とHX PROの部分です。バイアスは 160kHz のハイバイアス設計です。

PIONEER T-07S

 ドルビー B・C 用のICはソニー製です。

PIONEER T-07S

 その両側にドルビー S 基板が4枚あります。

PIONEER T-07S

 メカ部分を後ろから見たところです。写真には見えませんがメカ駆動用のモーターがあるので 3モーターメカです。Lo-D より整備が難しそうです。リールの録音・再生時は適切にテープテンション を制御するディジタルテンションコントロールを搭載しています。また、テープ挿入時にリール が回転して、テープのたるみを取るようになっています。

PIONEER T-07S

 基板には「REFERENCE MASTER Z MECHANIZM《と誇らしげに印字してあります。

PIONEER T-07S

 PC-OCC巻線のハードパーマロイコンビネーションヘッドです。ヘッドを高剛性ヘッドブロックに取り付け、 テープガイドの最適形状化したS.R.T.(Smooth Running Tapeguide)を搭載しています。

 ・・・と、前作モデルより値段を落としつつ新機能を搭載した、いいデッキです。 ソース側の音を忠実に再現するモデルだと思います。

 FLEX 機能があるので、テープのダビングの送り出し用のマスターデッキとしてずっと所持 していようと思っていましたが(珍しく新品購入ですし)、今は手元にありません。

 パイオニア最後の本格的デュアルキャプスタン3ヘッドデッキとして、良くできたデッキだと思います。

特性
項目 特性
録音再生ヘッドPC-OCC巻線ハードパーマロイ3ヘッド
モーターDCサーボ(キャプスタン用×1、リール用×1、メカ駆動用×1)
ワウ・フラッター0.022%(WRMS)
周波数特性10~25,000Hz±3dB(メタル)
10~20,000Hz±3dB(クロム)
10~20,000Hz±3dB(ノーマル)
SN比80dB(DOLBY S NR)
76dB(DOLBY C NR)
バイアス周波数160kHz
入力端子ライン100mV(入力インピーダンス:23kΩ)
出力端子ライン:0.5V(出力インピーダンス2.2kΩ)
消費電力19W
外形寸法幅440×高さ125×奥行280mm
重量5.0kg