Lo-D DAD-600

1984 年製造(想定)。定価は 120,000 円。1982 年の CD 誕生から 2 年。各社少しずつ価格を
下げ始めた機種を送り出してきた頃です。先代の DAD-800 から比べると一気に薄型化
されました。110,000 円の DAD-3000 もありますが、フルサイズ機としては本機が
Lo-D のプレーヤーの当時のメイン機種といっていいでしょう。
ワイヤレスリモコンが標準装備になったのも大きな特徴だと思います。
なのに DAD-800 よりも約 4 万円安くなっているのですからかなり進化しています。
音質もノンオーバーサンプリング機らしい素直な音ですし、なかなかのハイコストパフォーマンス機
だと思うのですが、残念なのは価格に対して見た目の高級感が全くないことです。
普及機と思われても致し方ないデザインは、当時としても人気がなかったと思います。
音は悪くないのに・・・。なので、ネット上もオーディオの足跡様を除き、情報はほぼありません。
なので、やっぱりこういうマイナー機は本ページで取り上げるしかありません(笑)

なんか、もう少し華やかなレタリングなどあってもよかったのではないかと思うほど、大人しすぎるパネル。
やっぱり 12 万円には見えません。そういう意味では DAD-3000 も同じなのですが、DAD-3000 の方は
全体的な寸法が小さい分詰込み感があるので、あまり安っぽくは見えないと思うのです。

Lo-D の CD プレーヤーには 1986 年頃までレタリングされていた Digital Audio のロゴ。
これも例えば金色にするとか、バッジ式にするとか高級感を出せばまた違ったと思うんですが。

見た感じはセパレートの高級機 DAP-001 と同じ FL 管表示部です。10 キーも簡素。表示部右隣に
リモコン受光部があります。

とても簡素で機能的に配置された基本操作ボタン。音声出力はライン出力も含めて可変です。

トレイは DAD-800 や DAD-3000 とは違って新設計となり、開閉時の音は静かでスムースです。
ただしゴムベルト駆動なので、ベルトが経年劣化で緩くなると、開閉できなくなったり
読み込みができなくなるので、定期的に交換したいところです。ベルトの直径は 30mm、
太さ 1.6mm のものだと 1.2mm のものより長く使えると思います。ちなみに DA-703D,503D も
トレイ開閉機構は同じで、プーリー径が一緒なので、同じ寸法のベルトが使えます。

天板を開けた状態です。DAD-800 の 2 階建て構造からかなり縮小された回路といえると思います。

電源トランスは 1 基。容量 14.7VA です。

電源回路部です。3 端子レギュレーターの放熱板が銅メッキなんて、Lo-D ではかなり珍しいです。
平滑コンデンサーは静電容量 1,000μF と少々寂しいですが AWD コンデンサー(左側奥の茶色のもの 2 本)が採用されています。
DAD-800 と同じく Pure Focus コンデンサー採用でもよかったのではないかと思うのですが。
これ以降の CD プレーヤーには、また Pure Focus コンデンサーが採用されるので、
なぜ DAD-600 だけ採用しなかったのか、ちょっとふ思議です。

ピックアップ周りの調整部です。真ん中の LSI は DAD-600 用に開発されたものか分かりませんが、
カタログにも掲載されているものです。

回路の集積化を更に進めたモジュール回路(メイン基板に垂直に立っている青い基板)。
本体高さ 8.3mm の実現に一役買っています。配線下の LSI は操作制御用ですかね。
リモコン操作が加わっているのにこれくらいで済んでいるので大きな進化のように思います。

一部、回路は 2 階建てになっています。上の基板はリモートコントロール用のようです。この基板の下には・・・。

DAD-800 や DAD-3000 にも搭載されている、サーボ回路をはじめとする処理回路が
内臓された専用基板です。鋼板でシールドされた設計になっているのは DAD-600 だけのようです。

専用基板のすぐ隣にDAコンバーターがあります。バーブラウンの PCM53JP-V です。

その流れで隣にアナログ回路部があります。銀色の平べったい部品がムラタ製のアナログフィルターですが、
再生時はかなり熱くなります。追加で放熱対策をした方がいいかな?と思うくらいです。
このフィルターが故障する確率は高いみたいですので。それにしても 12 万円のプレーヤーにしては
見た目寂しい感じかな・・・と。

Lo-D はそれまで音響用高品質パーツを使ってますみたいな宣伝はほとんどなかったですし、
カセットデッキあたりを見ても特別品が使われている感はなかったのですが、CD プレーヤーは
音響用パーツを宣伝文句に出し始めています。オーディオアナログ回路にはカタログで
謳われているブチル巻き銅スチロールコンデンサ(右側の樽型のもの)や UF コンデンサ(中央の黒いやつ)が使われています。

DAD-600 もユニトルクモーター採用機となります。プーリーは金属製。
2 次元駆動アクチュエーター搭載のピックアップは先代機と大きくは変わらないと思います。
音質ですが、第2世代機種の DAD-800 とは大きく変わったといってもいいと思います。
現代的な音になったといいますか、DAD-800 の乾いた低域とは方向が異なり、
深みのある豊かな低音が出てきます。帯域は広いとは言えないと思いますが、高域の伸びも
充分です。カタログで謳っている音響パーツが効いているのですかね。
曲の頭出し時にピックアップの動作が多少怪しい時がありますが、まだ安定動作している
方だと思います。オークションでもほとんど出て来ない人気のない機種ですが、DAD-800 よりも
確実に進化していると思います。


DAD-600 特性
項目 |
特性 |
周波数特性 |
5~20,000Hz ±0.5dB |
ダイナミックレンジ |
95dB |
SN比 |
95dB |
高調波ひずみ率 |
0.003% (1kHz) |
セパレーション |
92dB (1kHz) |
ワウ・フラッタ* |
測定限界以下 |
出力電圧 |
2.5Vrms |
消費電力 |
20W |
外形寸法 |
幅435×高さ83×奥行264mm |
重量 |
4.9kg |
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