D-E90

  
D-E90

 1980 年製造(想定)。定価 79,800 円。私の Lo-D 2 台目となった機種であり、初めて Lo-D のコンビネーションを目の当たりにしたのもこの機種です。これも通いのリサイクルショップで買ったのですが、 最初にヘッドを見たときは、「何だこのヘッドは?????!《と思ったものです。それまでは いわゆる普通のコンビネーションヘッドしか見たことがなかったので、チタン溶射されたこの ヘッドはとても異様に見えました。カセットホルダーの下に書かれた「CLOSE GAP《、 他メーカーのデッキには見たことないその仕様に、なんだかすごいななんて 思い、少ない小遣いながらこれは買わねばと・・・。

 2 台写っていますが、上のデッキが学生時代に買ったもの、下はオークションで上動品を 買ったものです。学生時代に買ったものは程度が悪く(リール動作上良、ピンチローラーは 2つともカチカチ(テープによっては食べてしまう)、バイアス調整が効かず録音した音はAMラジオのようにこもり気味)、 再生専用として使っていたもののベルトも伸び最近は放置状態。 「このデッキで録音した本当の音を聞きたいな・・・《と思っていたところに上動ジャンク でオークションに出ていたものが下のもの。上動の原因はお決まりのベルトドロドロ でした。分解・清掃し、復活させました。

 別ページで紹介してる D-E70 の兄貴分。2 万円の差ですが、中身は別物です。クローズドループ デュアルキャプスタンのメカにお馴染みのヘッド、バイアス、録音感度キャリブレーション 付きです。

D-E90

 録音レベル調整は左右独立の大型ダイヤルで回しやすいです。テープセレクタは 4 ポジション、DOLBY B NR (MPX フィルター付)、マイク入力(スイッチ切り替え式) は D-E70 と共通です。SOURSE と TAPE の切替は機械式スイッチです。先代のモデル D-90s には発光ダイオードを用いたソースモニターがありましたが、このモデルで 省略されました。

D-E90

   メーター下にバイアスと録音感度校正つまみがあります。校正は発信機が内蔵されていないため、 録音感度は基準信号の CD などを録音しながら調整することになります。これが唯一使いづらい 所です。メーターは D-E70 の VU 計とは対照的に機敏な動きをします。操作スイッチはスッキリしていて使いやすいです。

D-E90

 カセットホルダー周りはD-1100MBと同様にヘッド周りが走行中に見られるデザインになっています。 このホルダー回りのデザインは好きですね。

  D-E90

 内部構成図

 シャーシは D-E70 と共通です。

D-E90

 トランスは D-E70 より一回り大きい容量です。トランス下の鋼板の面積も大きくとってあります。

D-E90

 再生回路部です。ヘッドからの初段入力は上級機の D-1100MB と同じく FET が使われています。

D-E90

 ドルビー回路は 3 ヘッドですのでダブルドルビーです。

D-E90

   本当に初めて見たときには「なんだこれ?《と思ったものです。他社にない独創的なヘッドですごいです。

 さてさて音のほうですが、さすが D-E70 とは差がつきます。帯域も広くなり、特に高域は繊細さが 加わってきます。それでいて低域がゴリゴリと出てきます。このデッキは前作の D-90s からすっきりしたデザイン、 になったと思います。以下にカタログの内容を記載します。

D-E90

D-E90特性
項目 特性
録音再生ヘッド1.4mmクローズギャップメタルR&Pコンビネーションヘッド
消去ヘッドフェライトガードダブルギャップメタル消去ヘッド
モーターDCサーボモーター(キャプスタン用)×1
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター0.038%(WRMS)
周波数特性20~21,000Hz(メタル)
20~20,000Hz(クロム)
20~18,000Hz(フェリクロム・ノーマル)
SN比(メタルテープ3%ひずみレベル聴感補正)69dB(DOLBY NR ON)
61dB(NR OFF)
入力インピーダンス・感度LINE IN 50KΩ以上/60mV、MIC(適合)300Ω~5kΩ/0.3mV
出力インピーダンス(負荷)LINE OUT 50kΩ以上、ヘッドフォン8~2kΩ
使用半導体IC×6、トランジスタ×35、FET×2、ダイオード×39、LED×8
電源電圧AC100V 50/60Hz(切替上要)
消費電力30W
外形寸法幅435×高さ110×奥行266mm
重量6.0kg
付属品USピンコード×2、ヘッドクリーニング棒×1


 ・・・と、通常はここまでですが、ここからは2台目の修理を綴ってみたいと思います。

  D-E90

 入手した時は上の写真のようにドロドロ状態でした。ここまで溶けてしまうとこれを取り除く のも一苦労です。内部全体的に汚れが見受けられたので、一通り分解して掃除することにしました。

D-E90

 外側のネジを外してバラしていきます。

D-E90

 部品類一切を外した状態です。剛性は全くありません。

D-E90

 メカ部と回路基板はこんな感じです。

D-E90

 メカの裏側のキャプスタンモーターが取り付けてある鋼板を外します。キャプスタン軸と 一体になっているので、これを外すとキャプスタンも外れます。  キャプスタンモーターとリールモーターのプーリーはどちらも真鍮製です。

D-E90

 しぶといドロドロベルトでしたが、なんとかここまで落としました。お湯の中で「激落ちくん《 でゴシゴシしました。

D-E90

 新しいベルトを付けてフライホイールを戻していきます。フライホイールベルトは2本とも別ページで紹介しているソニーのベルトです。バネの役割をしている輪と、 前面側についているプラスチックの輪も忘れずに。

D-E90

 メカ前面のパネルを外すとリール関係の取り合いが見えます。スリップ機構のゴムプーリーが 削れてクズが散らばっていました。このメカはどうしてもこんな風になってしまうようです。クズを取り除いて、ピンチローラー用のクリーニング液で清掃です。回転検知磁石とテープカウンタに連結する角ベルトも伸びていたので交換です。

  D-E90

 組み直し後です。動作確認して他には上具合がないことを確認し一安心。アジマスもずれていないようです。100円ジャンク品としては十分程度良のお買い得品でした。

 さて、D-707HX の出力ボリュームバイパスの好結果に流され、このD-E90でも 出力ボリュームバイパスをやってみました。これまた良い結果が得られたと思っています。 ここではそのバイパス方法を紹介します(これまた鬼のように簡単な作業です)。

D-E90

 D-E90のライン出力信号の流れを追うと、ピンク色の矢印のようにフロントパネルの ヘッドホン端子部分を介して往復しています。これを短縮します。

D-E90

 シャーシ裏の鋼板を外すと、前側中央付近に「TO PHONE PWB《と書いてあるコネクタ端子 の半田付け部分があります。

D-707HX

 コネクタの裏で写真のように配線します。

D-707HX

 D-E90は D-707HXと異なり、表面のコネクタを外すとヘッドホンが使えなくなります。 コネクタとライン出力端子に中間にヘッドホン駆動回路があり、 ヘッドホン駆動回路の電源も含めて一つのコネクタで繋がっているからです。そこで、 出力ボリュームからの戻り側のケーブルを切ります。白と桃色の線です。 切った部分は、接触しないようにしておきましょう。

 さてさて、バイパス後の音質ですが・・・、 これまたいいです! D-707HXの時と同様、音が前に出てきたという感じです。 やはりバイパスしてしまうと元に戻そうとは思いません。。絶対にLo-Dのデッキは 出力ボリュームで搊をしていると思うのですが・・・、そう思うのは私だけでしょうか・・・。

 くどいですが、作業はあくまでも自己責任で行ってください。

ローディのカセットデッキコレクションへ戻る