D-9


  
D-9

 この D-9 もホームページで知り合った方から譲って頂いたものです。1982年製造。定価は 110,000 円。 D-2200MB に続き、ヒタセンライト R&P ヘッドと ATRS を搭載した機種であり、Lo-D のデッキの中でも 人気がある機種といっていいでしょう。

 D-9 の特徴は、3 ヘッドリバースデッキの D-X10 や ATRS 最終搭載機の D-909 と同様、ATRS による自動校正ができるのは もちろんのこと、手動校正もできるようになっている点です。ATRS をメーカーとしては 推したいと思われる中、手動でも校正できるように設計するというのは、心をくすぐられますね。 しかも手動調整の場合、一般的なバイアス可変で高域特性を調整するのとは異なり、イコライザー 調整で調整する仕様になっているのが、これまた他のデッキとは違う点です。

 また、多分、Lo-D 初のブラックボディでもあると思います。それ以前のメタルブラックシリーズは、 色的にはブラックではないですからね。堅牢な外観で下位モデルのデザインと違い格好いいです。

 D-9 については既にネット上にいろいろ情報はあるので今更感はあるのですが、 基本、このホームページは所持している、またはしたことのあるデッキの紹介を しているので、改めて紹介していきたいと思います。

D-9

 メカはもちろんユニトルクダイレクトドライブ、「 RED モーター《という特別な 吊称が付いています。見た目が赤いからそういう吊前が付いているだけのような気がしますが。 「HITASENRAITE《と書いてあるのはやはり特別ですね。

D-9

 カセットホルダーは下側のみ独立して開くようになっており、ヘッド周りの掃除がホルダー全体 を開けなくても出来るようになっています。個人的には、結局ホルダー全部を開けた状態で 掃除した方がやりやすいですが・・・。

D-9

 デジタル表示のテープカウンターに加えて経過時間表示があるのは D-99 や D-88 などと同じです。 一つのディスプレイで切り替える表示ではなく、独立表示仕様になっているのがいいですね。

D-9

 ATRS の操作ボタンです。黄緑色に光るボタンのデザインは D-2200MB 、D-99 と共通ですね。 データがインストールされると左上の「ATRS DATA STORED《が赤色に灯ります。

D-9

 手動キャリブレーション部です。伝統の左右独立テープ感度調整と、イコライザー可変つまみが並んでいます。 ホワイトノイズ発信機が内臓されているので、イコライザー調整は簡単にできます。音の変化がバイアス調整 よりもはっきりしていますね。

D-9

 Lo-D のデッキの中で唯一 D-9 に搭載されていると思うのが(他のメーカーでもあまり見ない 機能だと思います)、録音レベルのメモリーマーカー機能です。フェードアウト→フェードインのような操作をする時に、 フェードアウトする前のボリューム 位置がどこだったか忘れてしまうと、音量の差が出てしまいますよね。こんな時、写真に写っている MEMORY MARKER のリングをフェードアウト前のボリューム位置に設定しておけば、フェードイン時に その位置まで回せば OK というわけです。ありそうでない、とても便利な機能なのに、D-9 以降のデッキに採用しなかった のは何故なんでしょう?

D-9

 天板を開けた状態です。D-99 とよく似た構成になっているのが分かります。

D-9

 電源部です。D-99 と基本構成は同じです。

D-9

 上の写真で半田面が見えている電源基板の写真です。コンデンサーが D-99 とは違いますね。 容量は変わっていないと思いますが。

D-9

 ライン入力からの信号は、一端この別基板の回路を経由します。わざわざ別基板にしている 理由は何でしょうか?

D-9

 FET 入力といったところは他機と同じです。

D-9

 D-707 などど同じドルビー基板ですが、製造時期によって少々仕様が違うみたいです。上の写真は 部品取り用の D-9 の基板なのですが・・・。

D-9

 こちらは現在動いている D-9 のドルビー基板です。IC の配置やコンデンサーの組み合わせも 違います。多分、そのまま差し替えはできるものだと思いますが・・・。

D-9

 メーター裏側にディスプレイ表示用の基板があります。

D-9

 ATRS 用の IC は HA12035 で、この辺も D-99 と同じです。

D-9 D-9

 メカ部も基本的には D-99 と同じで、キャプスタンがダイレクトドライブであることが違いますね。 ユニトルク・RED モーターの写真はカタログから。RED(赤)の吊称が付いてコイル配置などが 変わっているようです。なお、モーター保持部シャーシには D-2200MB にも採用されている V.C メタル が使われています。

D-9

 ヘッド部です。「日立センダストフェライトヘッド《の略で「ヒタセンライト《みたいです。 本当にツルツルピカピカの表面は素晴らしいの一言です。

 D-9 の音質は、D-99 と同じような傾向だと思います。とにかく、メリハリのある明るい元気な 音だと思います。原音忠実というよりは、元の音に明るさが加わる感じでしょうか。わたしの持っている デッキは、ATRS ON だと少々メリハリがありすぎる感じに調整される傾向にあります。手動で校正した 方が原音に近い音になる感じです。D-1100MB の比較的素直な音に比べると、対照的です。

 以下に D-9の特性を示します。

D-9

D-9 特性
項目 特性
録音再生ヘッドヒタセンライト R&P コンビネーションヘッド
消去ヘッドフェライトガードダブルギャップ消去ヘッド
モーターユニトルク DD・RED モーター(キャプスタン用)×1
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター0.023%(WRMS)
周波数特性20~21,000Hz(メタル、クロム、EIAJ表示)
20~20,000Hz(フェリクロム、EIAJ表示)
20~19,000Hz(ノーマル、EIAJ表示)
SN比(メタルテープ3%ひずみレベル聴感補正)75dB(DOLBY C NR)
69dB(DOLBY B NR)
61dB(NR OFF)
入力インピーダンス・感度LINE IN 50KΩ以上/60mV、MIC(適合)300Ω~5kΩ/0.4mV
出力インピーダンス(負荷)LINE OUT 50kΩ以上、ヘッドフォン8~2kΩ
電源電圧AC100V 50/60Hz(切替上要)
消費電力30W
外形寸法幅435×高さ115×奥行282mm
重量6.3kg


ローディのカセットデッキコレクションへ戻る