D-80s


  
D-80s

 1978年製。定価は 69,800 円。上級機 D-90s から機能を省略して 1 万円安かった機種です。 しかし、どう考えても 1 万円しか違わないなら、D-90s を買った方が断然お買い得です。それは、 以下の比較表をご覧頂ければお分かりになって頂けると思います。

項目 D-90s D-80s
録音再生ヘッド1.4mm クローズギャップ
R&Pコンビネーションヘッド
(チタン溶射表面仕上げハイパボリック形状)
同左
ヘッドベース メタルダイキャストプラスチック
消去ヘッドダブルギャップメタル消去ヘッド 同左
キャプスタン仕様デュアルキャプスタンシングルキャプスタン
キャプスタンモーターDCサーボモーター電子制御 DC サーボモーター
録音再生同時モニター可能できない
バイアス、感度キャリブレーション可能未搭載
メーターニードル UV メーター+LED ピークメーターニードルピークメーター
ワウ・フラッター0.04%(WRMS)0.04%(WRMS)
周波数特性20~21,000Hz(メタル)
20~20,000Hz(フェリクロム)
20~18,000Hz(FeCr、ノーマル)
20~20,000Hz(メタル)
20~19,000Hz(フェリクロム)
20~18,000Hz(FeCr、ノーマル)
SN比
(メタルテープ3%ひずみレベル聴感補正)
68dB(DOLBY NR ON)
60dB(NR OFF)
67dB(DOLBY NR ON)
59dB(NR OFF)
入力インピーダンス・感度LINE IN 50KΩ以上/60mV、MIC(適合)
300Ω~5kΩ/0.3mV
LINE IN 50KΩ以上/60mV、MIC(適合)
300Ω~5kΩ/0.38mV
出力インピーダンス(負荷)LINE OUT 50kΩ以上、ヘッドフォン8~2kΩ同左
電源電圧AC100V 50/60Hz(切替上要)同左
消費電力29W20W
外形寸法幅435×高さ110×奥行267mm同左
重量7kg6kg
付属品USピンコード×2、
ヘッドクリーニング棒一式
同左


 特性値は D-90s より若干落ちるのはいいとして、やはり 3 ヘッドなのに録音再生同時モニターができない というのが残念です。特に Lo-D は、3 ヘッドの大きな利点として「録音再生同時モニターが可能《 であることを宣伝文句の一つとして挙げていましたので、これができない 3 ヘッドデッキというのは、 Lo-D のデッキの中でも異端児です。また、3 ヘッドデッキであれば、少なくともバイアス微調整機能 くらい欲しいところですが、それさえもありません。

 冒頭にも書きましたが、D-80s にあと 1 万円足せば、3ヘッドデッキとして一通りの性能と機能を 備えた D-90s が買えるのですから、お買い得感はやはり D-90s の方が高いと思います。ですので、 某オークションを見ていてもよく分かりますが、D-90s が数多く出品されているのに対して、 D-80s はほとんど出てくることはありません。販売当時も D-90s に比べたら桁違いに売れて いなかったと思います。

 そんな数少ない D-80s を運よく入手できました。出品時の人気もなく、500 円で落札。 これまでは D-80s の批判的なことしか書いていませんが、長期的に安定して テープが再生できるのはシングルキャプスタンの方であることや、 メカそのものは D-90s と同じとてもしっかりしたメカであること、 わたしのようにドルビー NR を普段使わず録音する方が多いこと などを考えると、D-80s でも充分であると言えるのです。そこで、一度は 手にしてみようと思って入手した次第です。

D-80s

 カセットホルダー周りは D-90s と同じと思いきや、微妙に違います。
 D-80s にあって D-90s に無い機能として、再生時は再生ボタン上の LED が点滅して 再生中であることを表示する機能と、AUTO REC MUTE 機能です。D-90s は MUTE ボタンを 押している間ミュートする仕様ですが、D-80s はボタンを押してから 4 秒後に自動で 一時停止する仕様です。AUTO MEMORY/REWIND 機能は同じですね。

D-80s D-80s

 カセットホルダーの記載が、微妙に D-90s と違います。D-90s は "IC LOGIC CONTROL"(写真左)ですが、 D-80s は "COMPUTER IC LOGIC"(写真右)です。なぜに違う表現にしたんでしょう? 

D-80s

 つまみ周りは 2 ヘッドデッキの D-70s とほぼ同じデザインになります。メタルテープを 意識してか、メタルテープ選択時は、dB メーター間の LED が点灯する仕様です。DOLBY NR ON 時 も同じく緑色の LED が点灯します。

D-80s

 天板を開けた状態です。

D-80s

 電源トランスは D-90s より明らかに小さいです。これだけ見ても、やはり D-90s の方がコストパフォーマンスが 高いと感じてしまいます。

D-80s

 電源回路周辺とロジック IC です。ロジック系は D-90s とは大分違います。

D-80s

 アンプ部です。D-90s はディスクリートで組んでいますから、これまた大分違います。

D-80s

 バイアス回路周辺です。干渉対策でしょうか、ドルビー基板との間に仕切り版を設けていますね。

D-80s

 そのドルビー基板。録音同時再生モニターができない分 1 枚しかなく、録音/再生で共用しています。

D-80s

 メカ全景です。サプライ側のフライホイールが無いだけで、あとは D-90sと同じです。キャプスタンモーターは 前表にも書きましたように、電子制御 DC サーボモーターです。

D-80s

 メカを上から。キャプスタンベルトはφ70の平ベルトになります。この s シリーズのメカの フライホイールは奥行き方向の幅も厚く、径も大きくて見ていて頼もしいです。

D-80s

 フロントパネルを外してリール周りを確認している時の写真です。リールはアイドラーゴムの劣化が 進行している場合は機能せず、回転しない場合があります。その時はホームセンターでも 売っている水道管用のパッキンが代用品として丁度よいです。お試しください。
 Lo-D のデッキの中でも、このメカは全体の見た目が頼もしく、個人的に好きなメカです。

D-80s

 ヘッドはハイパボリック型チタン溶射コンビ。消去ヘッドはシーソー式になっており、消去ヘッド真上の パッドとの間でテープを挟んで、テープにバックテンションを掛ける形になっています。

 このピンチローラーはこれまで見てきた Lo-D のデッキを見ていると、硬化しにくいピンチローラー のようです。外周が 2 段になっているタイプのピンチローラーは、例外なく硬化の進みが早いです。

 それにしても、表面仕上げがいつ見ても美しいヘッドです。

 そして、このカセットホルダーはヘッド手前に見えるリフターが、ホルダーが開くとテープを押し上げる 機構になっており、カセットが取り出しやすくなっています。D-980DD と同じ機構です。

 音質は何気に素直で、D-90s の男前な音に比べると紳士的な音のように思います。シングル キャプスタンなので、120 分テープなどの巻き込みも気にせず使えるところがいいです。 マイナー機種ゆえに、所持していたいと思います。

   以下、カタログ写真です。

D-80s

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