D-800


  
D-800

 1977 年頃のデッキになります。定価は 99,800 円。スラントメカである D-500 の上級機に位置し、 事実上の D-3500 後継機種となります。ウッドケースが標準でついており、デザインおよび重量 共に堂々たるものです。

 このデッキはネットオークションで入手しました。動かないということでしたが、目にすることが 珍しいデッキなのでジャンクにしては少し高値になりました。オークションで手に入れる前にも 実物を見たことがあったのですが、惜しくもその時は入手を逃してしまったので非常に悔しい思い をしました。そんな気持ちもあって、ちょっと頑張ってしまいました・・・。 この時点では、多分ベルト交換でひとまず動くのでは・・・と思ったりもしていたので。

 しかし、早速届いてから本体を見ると、外観はかなり汚い。いわゆるタバコのヤニです。 嫌な予感を感じつつ電源を入れると、モーターがおかしな振動をしながら回転する以外、照明も 点かず無反応・・・。 確かに動かない品ということなのでそれはしょうがないのですが、それにしてもこんなに程度の 悪い落札品はこれまでで初めてだったので、この時点で大分がっかりしたものです。

 再起出来ないかと思いつつ基板の再半田を行うと、点灯しなかったレベルメーターの照明が点きました。 ライン入力からの音声もモニターできるようになり、希望が湧いてきました。代用品があるかどうか 心配だったベルトも適切なものが見つかり、録音・再生までこぎつけました。無駄にならずに 済んで良かったです。

D-800

 ピアノタッチキーのボタンは D-500 と同じです。イジェクトスイッチの位置がおかしいのは、 中の板バネが折れてしまっているため、上まで戻らないためです。でも動作には問題ありません。 程度が悪いので、ドアパネルの文字も一部消えてしまっています。ドアパネルが開く動きは 滑らかで高級感があります。イジェクトボタンを押すと電動スライドのように開きます。 コイルばねがドアパネルに引っ掛けてある糸を引くことでドアが開くのですが、動作を滑らかに するために糸を専用のフライホイールに巻きつけた構造になっているため、動きが滑らかなのです。

D-800

 テープセレクターはバイアスおよびイコライザーを 1 セレクターで切り替える方式です。 DOLBY NR は B タイプ。3 ヘッドなので他のデッキと同じく録音・再生独立のダブルドルビー 搭載です。ON にするとスイッチ上の緑のランプが点灯します。

D-800

 今更ですが、ドルビー NR は録音・再生時のレベルが合っていないと その効果がしっかりと発揮されません。ドルビー NR ON で録音すると高域が落ちたり、逆に ハイ上がりになりすぎになったり、全体的に音量が安定せず音がもこもこするような場合があるのは そこに原因がある場合があります。ローディの 3 ヘッドデッキは普及機を除き、左右独立で 録音・再生時のレベルを合わせることができる感度調整(キャリブレーション)機構を搭載 しています。特にローディでは、デッキに発信器を内臓して感度調整ができるようにした ものを "D.C.C.S" システムと称し、この D-800 にも搭載しています。
 "TEST" ボタンを押している間、発信器からの基準信号が発信されるので、録音状態でモニター セレクターを切り替えながらソース側とテープ側でレベルメーターの振れが同じになるように 感度ボリュームを調整します。左右独立で調整できるのは、当時他メーカーでもあまりなかったと思います。

 "MEMORY" スイッチは、テープカウンターが 000 の位置で巻き戻しや早送りを自動停止 させたい時に ON にします。もう動かないかと思って試してみたら、しっかり動きました。 もちろん、テープカウンターが動かないといけませんが。

 上の写真で、どれだけ汚かったかがお分かり頂けると思います・・・。

D-800

 テープカウンターと、お馴染みの 3 ヘッドシステムインジケーターです。インジケーターは リード線がとても細いムギ球が使われており、現状ほぼフィラメント切れ。交換が難しいので そのままです。

D-800

 メーターは D-4500 や D-3500 と同じく VU 計としても dB ピーク計としても使えます。 それにしても、個人的にこの ホワイト LED 仕様はお気に入りです。

D-800

 本体裏側です。サービスコンセント、RCA 入出力に加えて DIN 入出力端子があります。 OUTPUT ON/OFF も D-500 と同じくあります。

D-800

 ウッドケースから本体を取り出して、天板を外した状態です。樹脂シャーシは基本的に D-500 と 共通です。メイン基板から手前に縦に立っている基板は D.C.C.S を構成しているようです。

D-800

 電源部は電源トランスも含め、D-500 とは差別化されています。なぜかヒューズホルダーが 片方バイパスされていました。手が入れられた形跡はなかったので、製造時からのようです。

D-800

 位相制御 DC モーターということで、モーター駆動回路が独立してあります。 スピード調整は写真に写っている半固定抵抗で行います。レギュレーターと放熱板を 固定するネジはプラスチックネジなのですが、経年劣化で折れてしまいました。 そのうちしっかり固定するつもりです。ちなみに、ここに金属ネジを使うとモーターが回転しません。

D-800

 シャーシ裏の底板を外して回路を見た状態です。シャーシが邪魔して整備しづらいです。右下 に IC が2個並んでいる部分が再生回路です。

D-800

 ドルビー基板です。当時まだドルビー IC がなかったためか、ディスクリート回路です!  現状、ドルビーを ON にすると音がこもり気味でイマイチです。コンデンサーを 交換したら変わるかもしれません。

D-800

 メカの裏側です。基本構成は D-500 と同じですが、機能追加と共にスイッチ類も追加 されています。大きく違うのはキャプスタン駆動のフライホイールが D-500 に比べ大口径化 されており、モータープーリーもよりしっかりしたものが使われています。 フライホイールベルトは当然メーカー在庫はもうありません。代用品として、千石電商の ホームページ上で販売されているφ100mm の平ベルト(幅 5mm、厚さ 0.5mm )がぴったり です。フライホイールとリールベルトを駆動する角ベルトもφ50mm 、1.2mm 角で代用 できます。カウンターベルトは一番長い角ベルトを購入し、各所適当な長さに切って 代用としました。

D-800 D-800

 ヘッドは初期型オリジナルです。消去ヘッドも D-500 と同じようです。ピンチローラーは 運良く硬化していませんでした。

 現在はハイポジテープでの録音がイマイチな所意外は、ひとまず問題なく動いてくれています。 程度の悪さからして音質への期待も???のところがありましたが、他のテープで録音した テープの再生も見事! 独特のエネルギー感はやはり初期型ヘッド搭載機の特徴なのでしょうか? 心配だったアジマスも問題ないようです。  それにしても 30 年以上前のデッキながら今日のデジタルオーディオよりも魅力的な音を 出してくるのですから、すごい・・・。音質もさることながら、D-800 は所持しているだけでも 満足できる、そんなデッキです。

 以下にカタログの内容を記載します。

D-800

D-800特性
項目 特性
トラック方式4 トラック 2 チャンネル
録音方式AC バイアス方式
消去方式AC 消去方式
録音・再生ヘッドR&P コンビネーション(フェライト)×1
消去ヘッドダブルギャップ(フェライト)×1
モーター位相制御DCモーター×1
ワウ・フラッター0.05%(WRMS)
歪率2.0%(1kHz 0UV)
周波数特性20~20,000Hz(クロムテープ)
20~15,000Hz(UD テープ)
SN比63dB(DOLBY ON)
55dB(DOLBY OFF)
入力インピーダンス・感度LINE IN 100KΩ以上/60mV、MIC(適合)300Ω~5kΩ/0.38mV
DIN IN 2kΩ/0.38mV
出力インピーダンス(負荷)LINE OUT 50kΩ以上、ヘッドフォン8~2kΩ
DIN OUT 50kΩ以上
使用半導体IC×8、トランジスタ×21、ダイオード×18
消費電力15W
外形寸法幅468×高さ180×奥行330mm
重量9.3kg

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