D-650


  
D-650

 1977 年製造。D-800 系のスラントメカから垂直型のメカに変わっていった頃のデッキです。 定価は 69,800 円。別途紹介している D-610mkⅡの上級機になります。メカ自体はほとんど 同じですが、付属回路が違いますし寸法も違います(D-650 は横幅がフルサイズ寸法に対して D-610mkⅡは横幅が狭いです)。

 オークションで購入した時点で、お決まりのベルト壊滅状態でした。ベルトは先に紹介している D-610mkⅡと同じものが使えますので、千石電商で入手できます。ベルト交換後動作確認を したところ、モニターセレクトスイッチの接触上良があることが分かりましたが、 それ以外は特に問題ありませんでした。

 このデッキの一番の特徴は、Dinamic Noize Limiter (DNL) を搭載していることです。DOLBY NR のような一般的な NR(ノイズ リダクション)は、録音・再生いずれの時にも動作させるものですが、これは再生時のみに 働いてヒスノイズを低減させる機能です。当時の安価なデッキにはノイズフィルターが 付いていましたが(D-500やD-610mkⅡなど)、これは単なるローパスフィルターと 同じのため、ヒスノイズが低減すると同時に音楽信号の高域もカットされてしまいます。 DNL は音楽信号の変化を抑えつつヒスノイズを低減し、かつ再生時のみ有効にすれば よい機能なので、録音時の NR の使用状態に関わらずノイズ低減効果があるというわけです。

 わたしの知る限りでは、この DNL 回路は 3ヘッド機としてはこの D-650 しか搭載されていません。 そういう意味でこのデッキも貴重なデッキではあります。

D-650

 メーターは VU 計で大きく、D-7500 と同様、針の軸が上にある仕様です。入手時は電球が 切れていましたので、ムギ球に交換しました。本来ならば電球の表面に青セロファンが貼って あるので明かりの色は青白い色なんですが、現在はムギ球そのままの状態なので写真のように 電球色になっています。 

 イコライザーはタイプⅢまで対応しています。バイアスは 3 段階切り替え可能なので便利です。 そして、バイアス切り替えスイッチの左隣にあるのが DNL スイッチです。

D-650

 メカ周りは D-610mkⅡとほとんど共通です。カセットホルダー周りのデザインが 独特な感じです。

D-650

 入出力端子は RCA と DIN があります。D-500 と同じく OUTPUT ON,OFF スイッチがあります。

D-650

 天板を開けた状態です。D-610mkⅡと共通部分がやはりあります。メカとトランスがやはり 全体の重さを占める割合が大きいので、持つと重心はかなり左寄りです。

D-650

 ベルトを代用品に交換する前のメカ部分の写真です。ベルトの取り回しについては D-650 で検索 すると他サイトで見ることができます。角ベルトは D-610mkⅡで紹介しているベルト径と同じです。 フライホイールベルトはφ85mm のものが丁度よく合います。千石電商ではφ5mmピッチでベルトが 入手できるので大変ありがたいです。

D-650

 電源トランスです。D-610mkⅡより一回り大きい感じですかね。トランスの右隣で中途半端に 中継はんだしているのがよく分からないのですが・・・。

D-650

 電源トランス脇の電源回路周りです。写真に見えるスイッチがライン出力 ON OFF スイッチです。 平滑コンデンサー容量は D-610mkⅡと同じく2,200μF です。

D-650

 再生回路部分です。再生アンプは D-610mkⅡと同じく自社 IC:HA1406 が使われています。

D-650  D-650

 再生回路に直列に並んで配置されているのが、上の写真の DNL モジュール回路です。 左右独立の回路となっています。どんな原理で動いているのか詳しくは分かりませんが、 DNL の効果は下の図のようにカタログで紹介されています。

D-650

 グラフのように、ヒスノイズが気になる高域だけ処理する回路になっているようです。 実際使ってみると、確かにサーッというヒスノイズのみ低減され、音楽成分の変化は 特に感じられません。各種ノイズリダクションシステムを用いて録音していなくても ヒスノイズ低減効果があるこの機能は魅力的です。もっと他のデッキにも搭載されても よかったのではないかと思います。

D-650

 ヘッドも綺麗ですし、アジマスも問題ない感じです。ピンチローラーも硬貨していません。 なかなか程度のよい状態です。

 音は元気です。本体のデザインからして時代を感じる音のイメージがあったとのですが、 高域も低域もエネルギー感があり、密度感が素晴らしいです。ちょっと音楽によっては回転ムラが気になる 部分はありますが、仕方がないでしょう。D-650 を聴いて、改めて初期型ヘッド機の面白さを感じました。

 なお、D-650には、後にデザインが変更された改良版の D-650MKⅡという機種が発売されました。

 以下にカタログの内容を記載します。



D-650cata

D-650特性
項目 特性
トラック形式4トラック2チャンネル
録音方式交流バイアス方式(105kHz)
録音再生ヘッドR&Pコンビネーションヘッド(フェライト)
消去ヘッドダブルギャップフェライト
モーターDCサーボモーター×1
ワウ・フラッター0.07%(WRMS)
ひずみ率1.7%(1kHz 0VU)
周波数特性20~18,000Hz(クロム、フェリクロムテープ)
20~16,000Hz(ノーマルテープ)
SN比60dB(DNL ON)
53dB(DNL OFF)
入力インピーダンス・感度LINE IN:100kΩ以上/60mV
MIC(適合):300Ω~5kΩ/0.38mV
DIN IN:2KΩ/0.38mV
出力インピーダンス(負荷)LINE OUT:50kΩ以上
DIN OUT:50kΩ以上
HEADPHONE:8Ω~2kΩ
使用半導体IC×7、トランジスタ×9、ダイオード×14
消費電力15W
外形寸法幅435×高さ167×奥行254mm
重量7kg
付属品USピンコード×2、UD-C60(生テープ)、ヘッドクリーニング棒一式

ローディのカセットデッキコレクションへ戻る