D-610 & D-610MKⅡ


  
D-610

 写真下が D-610(19 年製造(想定))。写真上が D-610MKⅡ (19 年製造)になります。 型式から分かりますように、D-610 の改良版が D-610MKⅡ になります。

 D-610 は、もともとわたくしがオークションで落札し所持していたもの、 D-610MKⅡ は、 掲示板に書き込み頂いたリフォーム様から譲って頂いたものです。同じ型式で同じ系列の デッキはこれまで所持したことがなかったので、お互いの比較対照ができ、勉強することが できました。リフォーム様からは取り扱い説明書も頂いたことで、また新たな参考資料も 入手することができました。

 D-610 は当時 62,800 円です。多分MKⅡ も同じくらいではないかと思います。 D-650 の弟分的存在で、メカは同じものの D.N.L が省略され、外形も幅が狭いです。
 D-500 と比較すると、更に安くなりつつ機能および性能は向上していると言えると 思います。高級機の証である3ヘッドデュアルキャプスタンをここまで身近な値段で出したことも 注目です。

 以降、2 枚並んでいる写真の左側が D-610、右側が D-610MKⅡ です。

D-610 D-610mk2

 操作はピアノタッチキーの機械式ですが、キャプスタンの動力を使って駆動する「POWER ASSISTED CONTROL《ですので、押し込む力は 従来よりも軽いです。この時代は、まだ電子式の走りの頃でありまだ信頼性に欠けていたところもあったようで、 カタログでは機械式の確実な動作を売りにしています。一見普通のカセットデッキに見えてしまいますが、 「3HEAD《のロゴがあるのがやはり大きなポイントですが、D-610 とD-610MKⅡではカセットホルダーの デザイン、3HEAD の表記が違います。

D-610mk2

   D-500 でも搭載されていた 3 ヘッドモニターディスプレイが誇らしげです。 いいですねえ、やっぱりこういうの。この部分は 2 台とも同じです。

D-610 D-610mk2

 2 台における大きな違いの一つはレベルメーターです。D-610 は D-650 と同じく針の軸が 上側の仕様ですが、D-610MKⅡは下側の仕様に変更されています。どちらも VU 計のみで、 のんびりした動きです。D-610MKⅡ の電球は全て切れていましたが、ムギ球に交換しました。 録音レベルはライン入力とマイク/ DIN 入力で独立、左右も独立調整式です。配置は 2 台とも同じです。

D-610 D-610mk2

 各セレクター部です。TAPE ⇔ SOURCE 切り替え、NR はドルビーのような NR ではないですが、ヒスノイズ低減に 効果があります。ドルビー B で録音したテープを再生する時に使っても丁度いいようです。バイアスとイコライザー は独立選択型ですが、D-650 のようにバイアスは各テープの種類において 3 段階で調整できる わけではありません。TYPEⅢを含む 3 ポジションが用意されています。D-610MKⅡには 当時のカセットテープの銘柄も追記されているのが分かります。 レックミュート機能も用意されており、D-610 は「EDIT《、D-610MKⅡは「REC MUTE《の 表記になっています。スイッチ形状は、わたしは D-610 の方が好きですね。

D-610mk2

 右端にさりげなく「DUAL CAPSTAN《。カセットホルダーに堂々と書いてもよかったのでは?

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 後の端子部はどちらも同じです。出力ボリュームが後ろについてます。今までにない仕様ですね。 なお、出力ボリューム調整はライン出力にのみ有効で、ヘッドホン出力は固定です。普通、逆じゃないかと 思うんですが・・・。

D-610

D-610mk2

 天板を開けた状態です。上の写真が D-610、下の写真が D-610MKⅡ です。 同じですね・・・。ただし、電源スイッチとトランス間をつなぐ電線の太さが違っていました。 D-610MKⅡ の方はトランスから出ている電線とほぼ同じ太さの電線(赤と白の線です)が使われていましたが、 D-610 の方はモーターや他の信号線と同じ太さの細い電線が使われていました。D-610MKⅡの 方が良い方向に改良されていますね。D-610 の方はこの部分の電線をいつものビクターの スピーカー線に交換しました(写真は交換後のものです)。

D-610mk2

 メカ部は 2 台とも共通なので、D-610MKⅡ の写真で紹介します。D-610MKⅡはオークションのジャンク品を落札したのですが、まあ、お決まりといいますか、 ベルトがものの見事に全て無くなっていました。残っていた部分はもうベトベトです。このメカ を見たのはこれが初めてだったので、手持ちのベルトで果たして合うものがあるかどうか心配しながら復旧していく ことにしました。

D-610mk2

 このデッキのモーターです。デュアルキャプスタンは高級デッキに採用されるのが専ら であり、普通ならキャプスタンモーターとリール用モーター辺りは分かれていますが、 このデッキはデュアルキャプスタンでありながらリール駆動やメカアシストまで含めて 1 モーターで済ませています。4 桁シリーズや D-980 系が登場する前の Lo-D のデッキは、 皆このメカのようです。

D-610mk2

 まずはリール駆動用ベルトを付けていきます。最初どのようにベルトを掛ければよいか 分かりませんでしたが、キャプスタンの根元から写真のように引っ掛ければ OK です。 ベルトは千石電商で購入しておいた、φ55mm1.2mm 角ベルトで丁度良いようです。 以後、登場するベルトは全て千石電商で購入したものです。もし D-610 をお持ちの方 がいらっしゃいましたら、参考にしてください。

D-610mk2

 D-E90 以降のダイレクトドライブでない 3 ヘッドデッキと見比べるとお分かりかと思いますが、 同じデュアルキャプスタンでもベルトの掛け方が違います。このデッキは、モーター・ サプライ側フライホイール・テイクアップ側フライホイールで1ループ構成としています。
 フライホイールベルトは、φ85mm の平ベルトが丁度合います。

D-610mk2

 カウンタベルトもボロボロでした。このデッキは完全機械式メカですからカウンタが動かなくても 特段問題はないのですが、折角なのでベルト交換をしておきました。巻き取りリールから上写真の 中間プーリーまではφ50mm 程度の 1.2mm 角ベルトで、中間プーリーからカウンタまではφ35mm の 1.2mm 角ベルトで大丈夫です。

D-610mk2

 組み上げてベルト交換終了です。

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 お得意(?)のエアダンプ機構です。このおかげでカセットドアが滑らかに開きます。

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 電源トランスはシールド板で囲ってあります。D-500よりひと回り大きい感じです。

D-610mk2D-610mk2

 電源周りです。これ以降、右の写真が D-610MKⅡ、左の写真が D-610 です。平滑コンデンサは 2,200μF で共通ですが、 色が違いますね。平滑コンデンサの左脇を見ると、電源ヒューズが 2 つ並んでおり、 普及機ですがモーター・照明用電源とオーディオ電源を独立供給しています。

D-610D-610mk2

 再生ヘッドの出力は自社 IC HA1406 で受けています。 ここはどちらも同じ構成です。

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 イコライザー部分です。まあ、同じですね。再生回路もそうですが、コンデンサーの色だけ一部違いますね。

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 マイクアンプ部分もまあ同じ・・・。

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 録音回路部です。

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 メーターやヘッドホン等、出力回路部です。

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 チタン溶射ヘッド以前のヘッドを見たのは、D-610MKⅡが初めてでした。写真映りはあまり綺麗でないですが、 表面はツルツルで綺麗です。

 さてさて、初期型ヘッドのデッキはやっぱりクローズギャップチタン溶射ヘッド のデッキに比べてどうなのかなあと思いつつこれまで録音してきたテープを 再生しても、特に大きな差は感じられず、この時代にこんなにいい音 してたのか・・・と感心させられます。録音した音色はとても明るく、ある意味ドンシャリ 的なところもありますが、明確な音には好感が持てます。

 現在は D-610 のみ所有しています。この2台は価格以上の音を出してくれていると 思います。音楽ソースによってはフラッターが少々気になる場合もありますが、 ご愛嬌ですかね。以下に特性を示します。

D-610

特性(D-610)
項目 特性
録音方式交流バイアス方式(発振周波数105kHz)
録音再生ヘッドR&Pコンビネーション(フェライト)×1
消去ヘッドダブルギャップフェライト×1
モーターDCサーボモーター×1
ワウ・フラッター0.07%(WRMS)
周波数特性20~18,000Hz(クロム)
20~18,000Hz(フェリクロム)
20~16,000Hz(ノーマル)
SN比53dB(D.N.L(NR) OFF)
入力端子ライン60mV(入力インピーダンス:100kΩ以上)
MIC 0.38mV(入力インピーダンス:300Ω~5KΩ)
DIN IN 0.38mV(入力インピーダンス:2kΩ)
出力端子ライン:適合負荷インピーダンス:50kΩ以上
DIN:適合負荷インピーダンス:50kΩ以上
ヘッドホン:8Ω~2kΩ
使用半導体IC×5
トランジスタ×12
ダイオード×17
消費電力12W
外形寸法幅390×高さ143×奥行254mm
重量6kg


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