D-3300M


  
D-3300M

 1978 年製造(想定)。定価は 148,000 円。世界で(?)初めてバイアス・感度・ イコライザーの自動調整を行う ATRS(Automatic Tape Responce search System) を搭載した D-5500DD の次世代機といっていいと思います。D-5500DD および D-5500M,MB は今のデッキスタイルからするとかなり大型ですが、D-3300M は標準の大きさに 近い寸法になりました。D-5500M,MB よりも進化した ATRS とユニトルクダイレクトドライブモータが 売りといったところでしょうか。私自身も特に好きなデッキの一つです。

 このデッキはとあるリサイクルショップのジャンク品として売られていました。 電源は入るが動作せず、といったもので、なんと 800 円。カセットドアを開けると、 びっくりするほど綺麗! ジャンクデッキにありがちな磁粉つきまくりのピンチローラー やキャプスタンではなく、ほとんど使われていなかったという印象でした。 これは、たとえ動かなくても飾っておくだけでもいいやと思い、迷うことなく購入しました。

 メモリー電池が切れていてもダメだと思い、電池を交換して動作確認。 そしたら何するわけでもなく動いてくれました。リール用のベルトがへたり気味だった ので、スリップしてリールの回転は怪しかったですが、フライホイールベルトは まだまだいける感じでしたす。購入後しばらくして、テイクアップ側のピンチローラーの 硬化が気になっていたので、新品ストック品に交換しました。なぜか、サプライ側 はもともと新品同様だったので、今もそのままです。

D-3300M

 テープセレクタはタイプⅢまで使用可能な 4 ポジション、 ドルビー NR は B タイプ(MPXフィルター付き)です。日立の 3 ヘッドデッキには、 3 ヘッドを強調するためか、NR のロゴの下に「DOUBLE DOLBY SYSTEM 《と 必ず記載されています。この表記は好きです。 録音ボリュームは左右独立式、かつライン入力とマイク入力の独立ボリューム。 さすが、高級機といった感じです。レベルメーターは dB 表示です。やはり、このメータの照明色が一番 雰囲気あります。ちなみに、輸出仕様の D-3300M は針式メーターではなく、蛍光管式の デジタルピークメーターになっていたようです。

D-3300M_ATRS

 テープセレクターの脇に並んでいるのが、ATRS のボタンです。この ATRS ですが、いまいち正常動作しているのかが分かりません。 説明書がないので。。。今は、録音状態で「TEST START《を押しています。 1kHz の表示が数秒続いた後、7kHz → 15kHz → 1kHz → 5kHz ・・・と数回 点滅した後自動で停止します。この設定データは各テープセレクタの位置に 保存することができます。

D-3300M

 カセットホルダーには「UNITORQUE DIRECT DRIVE《が赤で書かれています。

D-3300M

D-3300M

D-3300M

 上の 3 枚の写真は D-3300M の天板です。D-980DD と同じく回路ブロック図が書かれています。 高級機の貫禄感が上がります。 ブロック図は、このころの Lo-D の高級機の天板に書かれていました。プリアンプでは HCA-8300 といったようなモデルです。 そして、その脇には、デッキの仕様も表記されています。

  D-3300M

 天板を開けた状態です。他のデッキより背が高いのは、上下 2 枚の基板構造になっているからです。 中の配線は結構混み合っています。この上側の基板が、いわゆる ATRS の基板です。

d-3300m_atrs

 ATRS 基板全景です。2 つ並んでついているIC HA12020 が ATRS のカスタム IC です。信号経路が どうなっているのか、ぱっと見よく分かりませんが、最終的に録音ヘッドへの出力は左端のコネクタから出ています。

d-3300m_play

 再生回路部です。再生ヘッドの出力は、まずコネクタ脇の FET にダイレクトカップリング で受けています。信号経路のコンデンサーをちょっと変えてみました。

d-3300m_in

 入力端子付近のカップリングコンデンサもついでにちょっと変えてみました。そこから先は どれを変えた方がいいのかよく分からないので止めました。

d-3300m

 下側の基板です。電源のフィルタコンデンサーは、他のデッキと比較して容量が大きめのもの が使われています。

D-3300M

 写真の撮り方が下手ですが、DC モータの下に見えるのがダイレクトドライブモーターです。

D-3300M

 電源トランスは大容量のものです。振動が大きい傾向にあるのが気になるところです。

D-3300M

 この電源トランスの裏側には、ATRS データ保存用のバッテリーケースがあります。 本体をひっくり返さないと交換できません。また、注意書きのように電源を入れたまま の状態で交換しないとうまく動作しません。現在市販されている LR44 型ボタン電池 が使えます。

D-3300M

   ヘッドは、ハイパボリック形状になった CLOSE GAP R&P コンビネーションヘッドです。 ヘッド周りの程度はかなり良いです。

 以前はヘッドブロックが動いたり動かなかったりという症状があったのですが、 これは半田付けの怪しい部分を基盤全範囲再半田したことで直ってくれました。

 音質は・・・、その再半田の前は、良くもなく悪くも無くといった感じ でいたのですが、再半田後は激変?   「こんなに音がいいデッキだったっけ!《と・・・。 高域もしっかり伸びて広帯域なのはもちろんのこと、ローディのデッキ独特の 押しのある低音が程よくバランス。マスターテープ作り用のデッキとなりました。 気分的なことかもしれませんが、D-3300M の再半田はお勧めできると思います。

 以下にカタログの内容を記載します。



D-3300Mcata

D-3300M特性
項目 特性
トラック形式4トラック2チャンネル
録音再生ヘッド1.4mmクローズギャップメタルR&Pコンビネーションヘッド
消去ヘッドダブルギャップメタル消去ヘッド
モーターユニトルクDDモーター×1、DCモーター×1
ワウ・フラッター0.023%(WRMS)
周波数特性(マニュアル・ATRS)20~22,000Hz(メタル、クロム))
20~20,000Hz(フェリクロム、ノーマル)
周波数特性(ATRS)30~20,000Hz(メタル・クロム±3dB)
30~18,000Hz(フェリクロム、ノーマル±3dB)
SN比(メタルテープ3%ひずみレベル基準Aカーブ聴感補正)69dB(DOLBY NR ON)
60dB(NR OFF)[ATRS仕様]
使用マイクロコンピューター4ビット1チップマイクロコンピューター
バイアス可変ステップ32
ゲイン可変ステップ32
イコライザー可変ステップ32(1ステップ当たり0.25dB可変)
使用電池(メモリー保護用)酸化銀電池(G-13)×2
電源電圧AC100V(50/60Hz)
消費電力37W
外形寸法幅435×高さ165×奥行256mm
重量8.4kg
付属品USピンコード×2、ヘッドクリーニング棒


 さて、ここからはフライホイールベルトの交換についてサラッと紹介したいと思います。 ふと、久しぶりにデッキを動かしたら、なんだかテープスピードが遅くなったように感じ、 加えてなんだかワウが気になる・・・。ダイレクトドライブモーター駆動回路がおかしく なったか!? と一瞬思ったのですが、もしかしてベルトが伸びたかな・・・と。そこで、 再生中にサプライ側のピンチローラーを押し下げてシングルキャプスタン状態で再生して みると、いつもの音に。どうやらベルトが原因のようでした。回路のほうじゃなくて 良かったです。

D-3300M

 天板を開けてメカの部分を見ると、サプライ側のフライホイール側に写真のようなステーがついています。 まず黒いアース線と共締めされているネジを外します。ネジを外しても、矢印部分の突起とステーの穴で 突っ張り固定された状態になっているので、そのままではステーは外れません。

D-3300M

 そこで写真のようにマイナスドライバーなどでステーを持ち上げて外します。持ち上げすぎて ステーを曲げないように注意します。ステーの反対側(シャーシ下側)はネジ止めされておらず、 スリットに引っかかっているだけなので簡単に取れます。ステーにはダイレクトドライブモーター 駆動回路が付いているので、取扱には注意します。

D-3300M

 次にテイクアップ側フライホイール後方にあるコイル基板を外します。 矢印の 3 箇所のネジを外します。

D-3300M

 コイル基板を外したところです。これでベルトが外せる状態になります。交換したら 逆の順序で戻せば OK です。  

D-3300M

 コイル基板です。6極のコイルがきれいに並んでいます。これに3相交流を加えてフライホイール を回転させています。ワウ・フラッター 0.023% は当時としてはなかなかの特性だと思います。  

 交換後は、無事正常に動作するようになりました。

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