D-260

1979年製造。定価はネット上にも情報がなく分かりません。Lo-D の 1 ウェイ 2 ヘッド機のローエンド
機です。ドルビー NR もなく、ハイカットフィルターもない、本当に必要最低限の仕様で作られたデッキです。
ですから、内容からすればラジカセレベルといっても過言ではないかもしれません。
しかし、普通に音楽を楽しむ分には何ら問題ないといっていいでしょう。気軽に楽しめるという、
ローエンド機にはローエンド機なりの良さがあります。
録再ヘッドは、Lo-D の 2 ヘッド機お馴染みのSL ヘッド。メタルテープにはまだ対応しておらず、D-260 の後継機 D-270 がメタルテープ対応に
なります。録音レベル調整は、完全左右独立ノブのため、左右同時にフェードイン、フェードアウトするのは
なかなか難しいです。
機能的には、フルオートストップ、REC MUTE 機構があります。メカニズムは、D-610 や D-650 に
あるようなパワーアシストはなく、純粋に指の力でヘッドを持ち上げる機構なので、電源が入っていなくても
再生キーを押せばヘッドやピンチローラーは上に上がります。
再生出力ボリュームはありません。基本、わたしは無いほうがよいと思っているので、この点はいい感じ
です。

わたし、このメーターのデザインが好きです。ローエンド機に似合わず、目盛りがしっかり
刻まれていて、大きさも丁度よく、デッキ全体の雰囲気を引き立てています。

D-260 の録音ボリュームのノブです。プラスチック製ではありますが、ワイヤーをコイル状にして
差込口に噛ませ、抜け落ちないようにストレスを掛けた機構になっています。変な所、ちょっと
凝っています。

天板を外した状態です。とにかく、簡素です。逆にいうと、これで十分ということです。
中央に見えるメカから伸びる長い棒が基板上のスライドスイッチを動かして、
録音/再生の切り替えを行います。
また、この機種はボディだけでなくフロントパネルも樹脂製。重量感は無く軽いです。

電源トランス。小さいです。しかし何気にメカ側へはシールド構造になっているとも言えます。

電源回路。なぜか電源回路の近くからメーター出力が出ているのが上自然です。基板を他のデッキと共用している
ためでしょうか?

録音/再生回路です。ごちゃごちゃしていないところが、音に効いている感じがします。

フライホイールを外し、メカを裏側からみた状態です。このデッキを入手した時は、お決まりのベルト
ドロドロを含め、それを通り越して粉状態にもなっていましたので、根気良く掃除して
代用ベルトを組み込みました。

ベルトを組み込んだ後の状態です。ローエンド機ですが大口径フライホイールなので頼もしいです。
モーターの振動が少々大きいためか、電源を入れて回りだすと結構うるさいです。

メカの表側のリール部です。最初は、ここまで分解するつもりはありませんでした。裏側のベルト
を交換し、動作確認を行うと、なぜか巻き取り側のリールが動きませんでした。どこか固着している
と思いメカ前側の化粧パネルを外したところ、巻き取りリール側のストッパーが写真のように
錆びていて、巻き取り側リールのアイドラーゴムに固着していました。これを分離して清掃した
結果、正常に動くようになりました。

SL ヘッドを側面から。ヘッドの磨耗は、別途紹介している D-1 のような極端な磨耗はなく、
まだドロップアウトにも耐えられそうです。どうしてもこの SL ヘッドは磨耗を気にしてしまいます。

このデッキでよく分からないのが、写真中央に写っている金属の円盤です。電源トランスと
メカの間に、ボディにネジ 1 本で取り付けられています。他の部品とは全く関与しておらず、
何のために取り付けられているのか謎です。取り外して再生してみたりしましたが、何かが
変わるというわけでもなく・・・。何かの共振対策なのか? とにかく謎です。
さてさて肝心の音質ですが、他のデッキで録りためたテープを再生してみると、以外にも
低域がしっかりしており、見た目の安っぽさからは想像できない安定した音を聴かせてくれます。
高域の伸びも上足は感じず、スピード感もあり自然に聴かせてくれます。自己録音では、やはり高級デッキには
かなわず大人し目な感じですが、基本特性は良いものを持っていると思います。
とにかく全てにおいて簡素なので、整備も楽です。高級デッキばかり
持っていらっしゃる方も、1台はこのようなローエンド機をお試することをお勧めします。
このデッキの情報は何も持ち合わせていませんので、「オーディオの足跡《様から主な仕様はご確認ください。
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