D-X8Ⅱ


  
D-X8Ⅱ

 資料がないので詳しくは上明ですが、1985 年頃に発売されたデッキだと思います。 わたしの持っているデッキは、電源ケーブルの年式から見ると 1986 年製のようです。 初代機 D-X8 が 79,800 円なので、D-X8Ⅱ はそれより少し高いくらいの値段だった のではないかと思います。

 Lo-D 初の 3 ヘッドオートリバース機 D-X8 の後継機が この D-X8Ⅱです。 Lo-D の 3 ヘッドオートリバース機は、この他に別途紹介している 上級機 D-X10 がありますが、先に発売されたのは D-X8 です。D-X10 に比べて 性能および機能は見劣りしますが、3 ヘッドのオートリバース機で 8万円前後の値段だったのですから、とてもお買い得のデッキだと思います。

 3 ヘッドのオートリバース機にはあまり興味を持っていなかったのですが、 何となく試してみたくなり入手してみました。思いがけない実力を持っていて 驚きました。今まで使ったことのあるオートリバース機は、どうしても 往路と復路で音質の差が気になったのですが(再生は気にならなくても 録音した音は気になったりする場合もありました)、このデッキは音も安定していて、 なかなかスピード感のある音を聴かせてくれます。 オートリバース機を見直すことができたよいデッキとなりました。

D-X8 D-X8Ⅱ

 左が D-X8、右が D-X8Ⅱです。以降、同じ並びで表示していきます。カセットホルダーに D-X8Ⅱ は「TENSION-CONTROLLED MECHANISM《と表示があるのがまず違う部分です。D-X8 も 磁気を用いたリールのバックテンション機構が搭載されていますが、D-X8Ⅱはその強化版が 搭載されているといったイメージでしょうか。これは後に紹介するメカ部を見ると分かります。

D-X8Ⅱ

   これは D-X8Ⅱ の写真です。D-X8 には無いカウンター/TIME 切り替えボタンが 追加されています。追加された機能だからなのか、このボタンだけ色が違います。 MODE ボタンはリバースパターンの切り替えです。片面走行のみ、1 往復のみ、連続往復の 3 パターンが選べます。

D-X8Ⅱ

 これも D-X8Ⅱで新たに加えられた機能である「PEAK HOLD《です。多分 Lo-D のデッキでこの 機能が搭載された機種は、前にも後にもこの D-X8Ⅱのみだと思います。レベルメーターの ピークホールドなし、ピーク値自動更新、ピーク固定の 3 パターンが選べます。

 それから、何気に違うのがメーターパネル内の文字表示の色。 D-X8 は白ですが、D-X8Ⅱは金色です。こちらの方が俄然高級感があり良いです。

D-X8Ⅱ

 D-X8、D-X8Ⅱ共にバイアス調整ができます。3 ヘッド機はやはり少なくとも付いていて欲しい機能です。

D-X8 D-X8Ⅱ

 主基板の外観です。基本、2台とも同じです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 ここが面白いところです。D-X8 がいわゆる普通にトランスが取り付けられているのに対し、 D-X8Ⅱ は右写真のように、 45°傾けて取り付けてあります 。水平方向に対して斜めに傾けて取り付けられている電源トランスは他メーカーも含めてよく見かけますが、 垂直方向に傾けて取り付けてあるデッキを見るのはこれが初めてです。この取り付け方もトランスからの 漏洩磁束対策に有効なのでしょうか? しかし後続機種の D-909 や D-707 はこんな取り付けになって いないので、とても謎です。

D-X8 D-X8Ⅱ

 電源周り、同じです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 再生回路は非常にシンプルです。オペアンプは JRC 4562DD です。これも 2 台とも同じです。 微妙に電解コンデンサーが違う・・・?

D-X8Ⅱ

 このドルビー基板は日立の独自性が見られていつ見てもお気に入りです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 ドルビー基板の隣に各種調整用の半固定抵抗が並びます。見た目だけ、4 個は変わっていますね。 消去ヘッドは 2 個あるので、右上のコネクタから 2 個分の配線が伸びています。

D-X8

 D-X8Ⅱの表示部。前面パネルを通して見る表示色と直接見る表示色は違います。 このレベルメーターのデザイン、わたしは好きです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 一見して違いが分かるメカ部。基本構成は同じですが、D-X8Ⅱにはリールテンション調整用の 制御基板が追加されています。D-X8 にも磁気バックテンションコントロールは搭載されていますが、 リバース側(デッキ正面から見て左側のリール)には回転センサーが無いのに対して、 D-X8Ⅱにはリバース側のリールにも回転センサーがあるのが大きな違いです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 前からメカを見ると、基本構成は同じでもそれなりに違いがあるのが分かります。 このメカはリール駆動にベルトやゴムアイドラーを使わないギア駆動なので、 リール周りは簡素です。D-X8 のリールが白色ですが、このリールが経年劣化で 割れやすいみたいです。このデッキも例外ではなく、リバース側のリールは歯の 部分から直径方向に割れてしまっていてギャップが広がってしまい、モーター側 の歯とうまくかみ合わない事象が起きていました。このためか、D-X8Ⅱの方は リールの材質を変更して対策がとられています。
 左のキャプスタンの右隣にある、上から線が伸びているのが、リーダーテープを 感知するクイックリバース用センサーです。

D-X8 D-X8Ⅱ

 ここからは左右とも D-X8Ⅱの写真になります。ヘッド部です。新形状チタン溶射 R&P ヘッドのリバース仕様。左右の黒いネジでアジマスを 調整します。ヘッドを回転させるため、線はとても細いものが使われています。整備時に 切らないよう、いつも以上に注意が必要です。しかし、このヘッドは本当に独創的な すごいヘッドだなと、改めて思います。ヘッドの左右にある白い部品が、走行方向に応じて 消去ヘッドを上下させています。

 ただ、おかしいんですよね・・・。当時のカタログには、搭載ヘッドに「新ハイパボリック形状 R&P コンビネーション ヘッド《とあるので、D-8 に搭載されているものと同じ、真ん中に V 溝があるヘッドだと思っていた のですが、入手した D-X8 はどう見ても V 溝がない「新形状チタン溶射 R&P ヘッド《です。

D-X8

 カタログに一緒に載っているヘッド図なんですが・・・。上思議です。

D-X8 D-X8Ⅱ

 メカの底部には、写真のように補強のためと思われる鉄板が追加されています。 これを外すと右写真のようにヘッドの下側が覗けます。

D-X8Ⅱ

 2 台とも入手時はキャプスタンベルトが溶けていて、いつも通りベルト交換が手間でしたが、 メカの固着もなく比較的手間無く動作確認まで進められました。このデッキ、音がなかなか 侮れません。とても簡素な再生回路のためか、抜けが良く明るくしっかりした音です。 動作も軽快で、わたしとしてはお勧めの 3 ヘッドリバースデッキです。 ただし、入手するなら D-X8 ではなく D-X8Ⅱが懸命です。紹介したリールの上具合が D-X8 にはありますし、性能的にも機能的にも、そして外観的にも D-X8Ⅱの方が優勢 だからです。某オークションでもあまり人気がない機種ですから、出品されれば入手しやすい と思います。  以下に D-X8 の仕様を記載します。

D-X8

特性
項目 特性
録音再生ヘッド新ハイパボリック形状 R&P コンビネーションヘッド×1
消去ヘッドマルチギャップフェライト消去ヘッド×1
モーター電子制御 DC モーター×1
             DCモーター×1
ワウ・フラッター0.038%(WRMS) ±0.08%(W・Peak)
周波数特性20~21,000Hz(メタル)
30~19,000Hz±3dB(メタル)*
20~20,000Hz(クロム)
30~18,000Hz±3dB(クロム)*
20~18,000Hz(ノーマル)
30~17,000Hz±3dB(ノーマル)*
*新EIAJ基準表示
SN比74dB(DOLBY C NR ON)
68dB(DOLBY B NR ON)
60dB(DOLBY NR OFF)
           メタルテープ3%ひずみレベル聴感補正
入力端子ライン80mV(入力インピーダンス:50kΩ以上)
出力端子ライン:出力インピーダンス:50kΩ以上
ヘッドホン:8Ω~2kΩ
消費電力23W
外形寸法幅435×高さ115×奥行281mm
重量4.7kg


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