Mortal−2  心・鎧ウ・モノ

 

 

『木ノ葉隠れの里に三忍あり』。
それは、優秀な忍の多い木ノ葉においても、突出した三人の忍達を畏れ、讃える謳い文句
であった。

自来也と大蛇丸、そして綱手の三人は下忍の頃から既に他を圧倒する強さを誇っていた。
他の者なら何年もかかる下忍から中忍、そして上忍への道のりも、何でもないステップの
ように軽々と彼らは昇って行き―――各々まだ二十歳になるやならずで既に木ノ葉の里で
伝説扱いされるような別格の忍となっていたのである。
思えば、それは早過ぎたのだ。
『三忍』と呼ばれ、ある意味で忍として極みに昇ってしまった彼らは、やがてそれぞれ違
う道の探求に興味を抱く事になる。
個人的な事情と葛藤をその身の内に抱えながらも医療のスペシャリストを目指した綱手は
まだ良かった。
だが、密かに禁術の開発と探求にのめり込んだ大蛇丸は、その優秀さ故にその後引き返せ
ぬ修羅の道にはまり込む事になる。その野心は、『三忍』と賞賛される程度で満足するもの
ではなかったのだ。
そして、自来也。
彼は生来の豪放磊落な気性が幸いし、三忍と呼ばれその名が他国に知れ渡るようになって
も「それがどうかしたか」と笑っているような男であった。
己が有名になる事を面白がりはするが慢心する事はない。
忍としては『外れ者』に近い彼ではあったが、里にとって貴重な男であった。
だが、自来也が受けねばならないような依頼は、高額な事もあって滅多に無い。
それを幸いと彼は好きな読書や書き物に没頭し、それにも飽きるとふらりと放浪の旅に出
てしまう日々を繰り返していた。
そんな自来也が、その頃の猿飛達『上の者』には一番の問題児に見えたのである。
思い出したように里に戻ってきた自来也の首を彼らは押さえた。
それほど暇なら後進を育てる手伝いでもせよ、と。

「……ワシ、人にものを教えるのは苦手なんだが……」
伸び放題で連獅子のようになった白い髪を振って、自来也はぼやく。
「そんな弟子を取るようなトシでもないしの」
確かに物言いは年寄りくさいが、自来也はまだ世間一般では若造と呼ばれる年齢だ。
三代目火影はそんな弟子の頭を小突いた。
「やってもみんで、何をぬかすか」
「……そーだの。猿飛先生に出来たんだから、ワシにも出来るかもなァ…でもよ、せんせ。
先生の見てたのは大蛇丸や綱手姫ってえ出来のいい連中にワシっちゅう天才だろうがよ。
……ラクだったろー? ワシら、さっさと中忍になっちまったし」
三代目はぎろりと自来也を睨む。
「…そうだな。大蛇丸達は楽だった。一を知れば十を知るって優等生タイプじゃからな。
…お前と違って」
「ワシは天才だもんよ。そら違うわな」
三代目は半眼でため息をついた。
「……このたわけが……」
「…だからよ、先生。……ワシは人にモノを教えられんのよ。アカデミーを出たばかりの
ヒヨッコなんぞ、どう扱ったらいいのかわからん。ヘタすりゃ潰しちまう。……それでも
エエっちゅうんか」
真面目な自来也の声に、三代目も黙ってしまう。
自来也は『己』を知っている。
彼はまるで他人のように冷静に己を見詰めて、己の能力、状態を常に把握していた。
そういう意味でもまさに自来也は忍として天賦の才を持っていたといえる。
「…な? せんせ。…適材適所。人間には向き不向きがあるっちゅう事よ」
自来也はくるりと師匠に背を向け、歩き出す。
「自来也」
「あいよ」
「………おぬしの言う事も一理ある。だがな、それでも他人にものを教えると言う事は、
己自身の精進に繋がるものだぞ。…ま、よい。やる気の無い師匠では弟子が不憫じゃから
な。……その代わりしばらくは大人しゅう里におれ。フラフラと勝手に出歩かれては困る
のだ」
自来也は片手を挙げて了解を示した。
「…あいよ、せんせ。先生がコハル先生に怒られンだろ? しばらくは大人しくしとるよ」
のんびりと歩み去る弟子の背中に、三代目はため息をついた。
「……ったく…どうしようもないヤツじゃ……」


しばらくは三代目の言いつけ通り、大人しく里にいた自来也だったが、書庫のめぼしい書
物、巻物を読破してしまうとまた退屈の虫が騒ぎ始めてしまった。
「のォ、先生。…ワシ、ちょいと出てきていいかの」
三代目はぎろりと睨む。
「なんじゃ…もう辛抱出来んようになったか…仕方のないヤツじゃな。まぁ、わしに断り
を入れただけでも進歩したか。…目的はあるのか?」
うん、と自来也は頷く。
「ワシ、先生の猿魔みてェな口寄せ出来るヤツがおらんから。おったら便利だろーと思っ
て」
「…ふむ…口寄せ契約相手探しか。目当てはなんじゃ?」
「どうせなら里の中で見つけられるよーなんじゃなくて、大物狙いでいくつもりよ。伝説
の大蝦蟇あたりがええのォ」
三代目は苦笑した。
「……わかった。やってみるがいい。ただし、定期的に連絡だけは入れろ。それから各地
で気づいた事も報告する事。……それが約束出来るなら外に出る事を許可しよう」
自来也は口をへの字に曲げたが、しぶしぶ頷いた。
「わかったよ、先生。…ったく、面倒だのォ。間諜の真似事かい」
「……お前、忍じゃろうが…忍の仕事は本来そういう陰の仕事じゃ、バカ者。まったく、
お前ときたら暴れる事しか考えておらんのか」
三代目の小言を遮るように自来也は手を振った。
「だからよ、せんせ。人には向き不向きがあるんだっつーの。…ま、ワシは透遁も天才だ
が」
「……お前の透遁術は動機が不純じゃ………」
わはは、と自来也は笑い、師匠に別れを告げてから放浪の旅に出た。


木ノ葉の里を後にして二ヶ月、自来也は旅を続けた。
懐には案内書代わりの古い巻物。
この巻物には大蝦蟇の存在を示す幾つかの事柄が記されているだけで、口寄せの契約書で
はなかった為、自来也は先ず『本人』を捜す必要があった。
「ふうむ…北の沼地もハズレかい……しっかし、山のようなガマなんぞ本当におるんかい
の」
しかも、人間並みに知能があり、術まで駆使する一種の妖怪。バケモノである。
訓練された忍犬などと一緒には出来ない相手だ。
相手の機嫌次第では敵になる恐れすらある。
「…だから、味方にする甲斐もあるっつーものよ…それにしても腹が減ったのォ」
ふう、と自来也は息をついた。
今日はもう随分歩いた。しかしこんな山の中ではもう野宿でもするしかあるまい。
少しでも居心地の良さそうな場所を求めて頭を巡らせた自来也は、木々の隙間から寺らし
き建物を見つけた。
「…ほう…もしかして、山寺…かの? ふむ、運が良ければ人の善い和尚がおって、一宿
一飯にあずかれる。…最悪でも軒下くらいは借りられよう……」
自来也は迷いもせずに山寺に向かった。


「たーのもぉ!」
まずは無人の荒れ寺ではないと見てとった自来也は声を張り上げた。
「山で日が暮れて難儀しとる旅の者じゃあ! 悪いが泊めてもらえはすまいか?」
自分の大声が古い建物に吸い込まれていくのを聞きながら、自来也はのんびりと構えてい
た。
悪い『気』はここには存在しない。
万が一盗賊などの輩がねぐらにしていたとしても、自来也に敵う者がいるはずもなかった
が。
しばらく待っていると、ようやく何か生き物の気配が近づいてきた。
カラ、と戸を少し開けて顔を覗かせたのは子供だった。
黙って静かに自来也を見つめる眼は水のような秋の空色。白い肌に淡い金の髪。
寺に住まう小坊主とはかけ離れた容姿の子供を自来也はしげしげと見下ろした。
(…こりゃあまた随分と小奇麗なお稚児じゃの……)
「…あー…ワシは…自来也っつうモンだわ。…自分で言うのもナンだが、怪しい者ではな
い。先も言うたが、この山の中で日が暮れてしもうてな、難儀しとるのじゃ。泊めてはも
らえぬか?」
金色の髪の子供は少し首を傾げ、それからおもむろに頷いて自来也が入れるように戸を大
きく開けてくれた。
「……おお、すまぬ。入れてくれるのか」
子供は自来也を招き入れ、用心深く戸を閉めた。
「どなたですかな?」
奥から、和尚らしき年配の男が出てくる。
「…ああ、旅のお人ですか。とんだ貧乏寺ですが、夜露くらいはしのげます。どうぞおあ
がり下さい」
自来也はぺこりと会釈した。
「かたじけない。ワシは自来也と申します。力仕事くらいなら出来ますでな、何かお困り
でしたら言って下さい」
「そりゃあありがたい事です。もしかしたらお願いするやもしれませんが…とりあえず一
休みなさるといい。白湯くらいしか出ませんがあな」
和尚の後について暗い廊下を歩いていると、先ほどの子供も大人しく後をついてくる。
(…この子供、口が利けぬのだろうか……それにこいつ何だってあんな物を…)
一度も言葉を発しない子供に首を傾げた自来也の腹が、「ぐぅ」と空腹を訴える。
和尚は申し訳なさそうな顔で自来也を振り返った。
「自来也さん、でしたかな。…粥で良ければご用意しましょう」
「…いや、お構いなく。泊めて頂けるだけでありがたいですから」
あきらかに蓄えの無さそうな寺の様子に、流石の自来也も遠慮する。
和尚は柔和な笑みを浮かべた。
「山で難儀していた旅の方に粥の一杯も差し上げぬのは仏の道にも外れましょう。…本当
に粥と漬物くらいしかありませぬが、遠慮なさらず。…これ、自来也さんに食事の支度を」
子供はこくんと頷くと小走りに奥へ消えていった。
「すみませんなあ…」
「いやいや。ところで…ろくなこのような山の中で何を…? ここは旅の街道とも外れて
おりますが」
自来也は曖昧に笑った。
「…実は、捜し物をしておりましてな。この山にも、その目的で入ったんですが…どうも
見当違いだったようですわ」
「ほお、何をお捜しで…?」
和尚の質問に、自来也は頭を掻いた。
「和尚殿はご存知ですかな……山のようにおおお――――っきな、蝦蟇蛙なんですがの」
和尚は思わず目を丸くした。
「…山のように大きな蝦蟇…?」
わはは、と自来也は笑う。
「やっぱりご存知ないですわな。いや、いいんです」
「…もしかして、自来也さんは…忍の方…ですか?」
自来也は素直に頷いた。
「そうですが……あ、もしかして忍者と関わるのはマズイので? そうなら仰ってくださ
れ。退散致します。ご迷惑はかけられませんからの」
隠れ里の存在を当たり前と受け止め、忍者を空気のように認めている土地とそうでない土
地がある。各国を旅して歩いていた自来也はそれをよく知っていた。
忍者が『迷惑な存在』になる場合も多いのだ。
「いや、そう言う事ではありません。お気遣いなく。そんな大きな蝦蟇を探してどうなさ
るのだろう、妖怪退治ならば忍の方だろうかと…そう思っただけです。……さ、どうぞ」
和尚はからりと戸を開け、自来也を部屋に通した。
「掃除も行き届きませんで……ご辛抱ください。何せ、私と先程の子供の二人なもので」
ああ、さっきの金髪の子か、と自来也は顎を撫でる。
「……可愛い子ですな。ご親戚の子供さんかなんかで…?」
和尚は首を振った。
「変わった子でしょう……あの子は…まあ、預かりものですわ。…ただし、帰す家はあり
ません。…もう少し物を覚えて…本人がその気になったら、仏の道に入るのもいいと思っ
ております」
「…立ち入った事を訊きますがな…あの子が首に掛けておるのは…注連縄ですな? いや、
ちぃと気になりましてな…寺で注連縄っつうのも…」
第一、あれは人が首に掛ける物ではなかろう。
和尚はぎこちなく笑った。
「まあ…仰る通りです。あれの意味はご存知でしょうか」
自来也は眉根を寄せた。
「…ワシの記憶では、あの縄は一種の結界だと…」
「その意味通りの目的で、私はあの子にあれを掛けました」
座布団をすすめながら和尚は重い息を吐いた。
「…どうぞお座り下さい。こんな辺鄙な寺にお越しになったのも何かの縁…私も、どなた
かにお話できたらと思っていたのです。………あの子は、おそらくはどこぞの里の…忍の
子なのではないかと……私は田舎者ですし、忍の方々の事はよくわかりません…が」
和尚は腰を上げ、戸棚の上から何か包みを取り出してきた。
「あの子がこの寺に置いていかれた時に持っていた物の中に…金属の板の断片がありまし
た。これです」
自来也は「失礼」と断わって、包みを開く。
風呂敷包みの中には、幼子を包んでいたらしい古い産着、守り袋。それと、懐剣に額当て
の一部らしい金属片。
「…これは……おそらく額当て…ですな」
「やはり………」
(しかも……この印しは木ノ葉……? 三分の二ほど欠けておるが、先ず間違いない!)
門外漢の和尚に判別はつくまいが、自来也にとっては見間違えるはずも無い物だ。
やれやれ、と自来也は苦笑を浮かべた。
これはやはり『縁』だろうか。
木ノ葉の里より遠く離れたこの山奥で、木ノ葉の子供に出会う。
「…置いていかれた、と仰っしゃいましたかな…?」
「はい。この山の麓に村がございまして。七年ほど前に、村に行き倒れ同然に流れ着いた
女性がおりまして…その女性は身篭っておったのです。子を産み落とした女性は無理が祟
ったのでしょう…すぐに亡くなったそうです。残された赤子を村の者が不憫がって面倒を
見ていたのだそうですが…あの子が少し大きくなるにつれ、妙な事をするようになったら
しくて。それで村の者が、これはきっと何かが憑いたのだと考えて、三年前にこの寺に連
れてきました。……どうやら、村でも一つの家で養子にしていたのではなく、持ち回りで
面倒を見ていたようなので…うちでも良ければ預かろう、と言うと村の者は安堵したよう
にあの子を置いていってしまったのです」
根は善人な村人達だったのだろう。だが、正直に言えばよそ者の子供は厄介者でしかなか
ったのだ。そこへ、忍の血を目覚めさせた子供のした事は、彼らに恐怖を与え、村から追
い出す絶好の口実になったのだと自来也は推測した。
「はあ…大体はわかりましたがの。その、妙な事とは?」
和尚は眉根を寄せ、小声で打ち明けた。
「……あの子は…何も無いところで火を起こす事が出来るのです。始めは火花程度だった
らしいのですが、そのうちに火球を生み出す程になった…村人達にとっては、手に余るど
ころか、気味の悪い子供になってしまったのでしょう…火事を起こす前で良かった。もし
あの子の所為で火事でも起きていたら…」
自来也はのんびりと答えた。
「最悪、魔物憑きとして殺されておりましたな。…なーるほど、注連縄はあの子の能力封
じですかい」
和尚は恥ずかしそうに苦笑した。
「実は、色々試してみたのです。私には専門外の事なので、何をどうすればあの子の妙な
力を抑えてやる事が出来るのかと。お札やら、数珠やら…半ばヤケであれを身につけさせ
ました所、不思議に火を起こさなくなりました」
自来也は顎を撫でる。
(…ふうむ、何らかの精神的枷になったという事か…? しかし火遁か…無意識に操れる
術ではないが…今の話ではチャクラのチの字も知らぬはず……考えられるとすれば…)
ゾクリと自来也の身の内を何かが走り抜けた。
(……天才…というヤツ、か…)
天から与えられた才、と書いて天才。
それも、軽々しい意味合いの言葉ではなく、本物の。
まるで息をするように自然にチャクラを使う、別次元の生き物だ。
自来也を含めた木ノ葉の三忍も、人が言う『天才』ではあったが、もしかしたらあの子供
は自来也達をも超えた存在である可能性がある。
「……私には忍の事はよくわかりませぬ。この金属片も、額当ての一部であろう事は推測
出来ても、これを手掛かりにあの子の身元を捜すことはかえってあの子を危険な目に晒す
結果になるかもしれないという可能性を考えると出来ませんでした」
和尚はそっとため息をついた。
「…ですな。あの子の親御が何故この地で果てる命運となったのか…もしも咎人の子だっ
たりしたら…いや、もっと複雑な事情で他の里の忍に追われていたのだとしたら…そう考
えると迂闊に尋ねて歩くわけにはいきませぬなあ」
「自来也さん……」
自来也は額当ての欠片をそっと元通りにしまった。
「ご案じ召されるな、和尚殿。…あの子を不幸にする気などワシにもありはしませんわ。
…ここで、仏の道に入る。…それも、あの子供の救いにはなるでしょう……」
だが、と自来也は和尚を見上げる。
「…己一人で御し方を学べるほど……容易い『力』ではなさそうですな。…下手をすれば
あの子は己で己を灼き滅ぼすかもしれませぬ。…導き手が……必要でしょう」
和尚はゆっくりと頷いて手を合わせた。
「……貴方がこの荒れ寺においで下さったのは…御仏のお導き……どうぞ自来也さん。あ
の子をお救い下さいませ」
自来也はフ、と自嘲に唇を歪めた。
(そら…何だか知らんが猿飛のセンセの思うツボになってきやがった…まったく……ワシ
の日頃の行いはそんなに悪いかのぉ)
「あいや、和尚殿。…救うなどと大層なモンじゃあないですがのぉ。…ま、縁があったの
は確か。あの子次第ではありますが。あの子がワシと来る、と自分の口で言うならばこの
自来也、責任を持って里まであの子を連れて行くとお約束致しましょう」
「自来也さん…」
和尚は痛ましげな表情になった。
「あの子は、口が利けません。……ここに連れて来られた時から私は一度もあの子の声を
聞いたことがないのです」
自来也は眉を寄せた。
と、その時カラ、と静かに部屋と廊下を隔てる戸が開いた。
廊下に子供が座っている。脇の盆には大ぶりな椀によそられた粥と、漬物、煮豆にお茶。
自来也は子供に微笑みかける。
「おお、すまんな」
子供は盆を自来也の前に置き、膝をついたままひたと彼を見つめ、そして淡い金髪を揺ら
して頭を下げた。
「うん?」
子供は自来也の手を取り、その掌に細い指でゆっくりと文字を綴る。
自来也は綴られた文字を読み取って頷いた。
「…聞いておったのか……」
子供はこくんと頷き返す。
「そうか。…お前が自分でそう決めたのなら、ワシは先程の言葉は違えん。……一緒に、
来るか」
子供は再び頷いた。
自来也を見上げる空色の眼からは子供らしからぬ静かな決意が見て取れる。
この子は、自分で分かっていたのだ。
自分の存在は、この寺と和尚にとって『迷惑』なものであると。
自来也は諦めたように唇の端で笑い、子供の金色の頭に手を置いた。
「わかった。……ワシと来い」


 
 
思えば、この時既に自来也はこの子に『捕まって』いたのだ。
―――やがて木ノ葉で『四代目』を襲名する事になる金色の子供に。
 
 

2003/10/13

 



 

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