日曜日の昼下がりとピザのある光景
とある日曜日のこと。 朝メシを済ませたばかりのところに、教授から電話があった。 ちなみに、教授からの電話、メールの着メロは目下の所『オペラ座の怪人』である。深い意味は無い。 「はい、カカシです。おはようございます、先生」 『おはよう、カカシ君。今日、忙しい?』 オレの(バイトの)雇い主である教授は、大学での講義の他にも何やかやと色々やってて、結構忙しい。 で、ひょんな事からお知り合いになったオレが、個人的なアシスタントをやっているわけなのだが。(偶然にも住まいが同じマンションだったので、ラッキーと言えばラッキーなのである。時給凄くいいし) 今日はバイト休みのはずだけど、急な仕事かな? 「あ、大丈夫ですよ。別に予定無いです。何ですか? 急ぎの入力でも?」 『いや、仕事じゃないんだけど。あのさ、今日のランチはデリバリーでピッツアを取ろうと思っているんだ。良かったら、食べにおいでよ。もちろん、イルカ君も一緒に』 おっとお。ランチのお誘いだったか。 「ピザですか? わ、オレ大好きです。喜んで伺います」 『ん、良かった。じゃあ、十二時過ぎたらこっちにおいで』 あ、嬉しそうな声。にっこり笑った金髪美形さんの顔が自然に眼に浮かぶ。 「はい。ありがとうございます」 携帯を切ったオレに、イルカが眼を向けてきた。 「……ピザ?」 「うん。昼メシ、ピザ取るからお前と一緒に食いにおいでって、先生が。…いいよな? 昼メシ、何か仕込んでた?」 「あ、いや今日は特にやってないが」 「じゃあ、行こうぜ。そういや、郵便受けに新しいピザ屋のチラシ入っていたな。あれ、見たんじゃない? 先生」 ウチとこは、セキュリティの厳しい超高級マンションではないので、エントランスホール内の郵便受けには時々その手のチラシが入ってくるのである。 B級グルメが大好きな彼は、そういうチラシに弱いと言うか―――好きなのだな。 今回のようなピザ屋のものはもちろん、寿司屋や蕎麦屋、弁当屋のチラシなどをきちんとファイルに入れ、保存している。 曰く、写真つきのメニューは見ているだけで楽しい、のだそうだ。(何となくわかるけど) クーポン券を見ると、利用しないといけないような気にもなってしまうらしい。 こういう風にノセられてくれる人がいるから、ピザ屋さん達もわざわざカラー写真入りのチラシを大量に刷って配るんだろうなぁ。 「きっと先生、一人で食べるより、大勢で食べた方が色々な種類のピザが食えるとか思ってんじゃないかな。初めて、日本の某大手ピザチェーン店のチラシを見た時、感激したらしいから」 「感激?」 「種類の多さとトッピングの独創性に」 「そうだな、外国じゃ照り焼きチキンとかモチとか乗ってるピザはないかも…な。たぶん。外国のピザ屋、見たこと無いから断言は出来んが」 「オレもよく知らないけど。日本でもちゃんとしたイタリア料理の店では宅配ピザチェーン店みたいなゴテゴテしたピザって、出てこないよーな気がする」 「まあ、どっちにしろああいうのって、大勢で食った方が美味いよな。…俺、何か用意しなくていいか?」 出た。イルカさんの主婦的気遣い。 「ん〜? そうだなあ…たぶん、飲み物も先生が用意すると思うしぃ。デザートでも用意する? 先生、ウチにメシ食いに来る時、大抵何かデザート持ってきてくれるじゃない」 よし、とイルカは頷いた。 「わかった。ランチがこってり系なんだから、デザートはサッパリ系にしよう」 「サッパリって何買ってくりゃいいの?」 「まだ九時前だろう? 今からなら作れるよ。寒天あるし。蜜豆なんてどうだ? 教授、好き嫌い無いんだろう?」 ああ、オレのダーリンはホントにマメな野郎だわ。オレだけだったら絶対スーパーかコンビニに走ってるよ。 蜜豆がサッパリ系なのかどうかは判断に苦しむところだが、イルカがそれを念頭において作るのなら、きっとサッパリした蜜豆になるんだろう。 「うん。先生、イルカの作るものは何でも美味いって言ってたし、喜ぶと思う。じゃあ、任せていい? 何か他に要るものあったら買ってくるよ、オレ」 「そうだなあ……材料は足りると思うから、買い物は行かなくても大丈夫だ。その代わり、洗濯頼む。せっかくの晴れ間だ」 「おっけー」 今年は梅雨に入るの早かったもんなー。お日様出ている日曜日なんて貴重だもんね。シーツとかバスタオル、洗っておかなきゃ。(と、すっかりオレも主婦感覚) オレもイルカにつられて、結構マメに家事やるようになったけど。 もしもイルカがオレよりも面倒くさがりな男だったら、この家はどうなっていたことやら。 考えただけでも薄ら寒い笑いが出るわ。 イルカは基本豪快さんなんだけど、部分的にすごく細かいのよね。その細かい部分が、大部分家事方面に向けられているというのは、とてもありがたい事だと思わなきゃな。 「枕カバー、忘れるなよ。トイレのタオルもな」 ―――ホラな?(笑) 行く前に一応、『今から行きます』メールをすると、間髪入れずに『待ってます』メールが返ってきた。 「よし、ゴチになりに行くべ」 戸締りをして、最上階へ向かう。 いつ来てもこのフロアはオレらの所とは別世界な雰囲気。同じマンションの中なのに。 エレベーター出た途端に、いきなり高級感漂ってんだよね。 ほれ、同じクルーズ客船内でも、部屋のクラスがスタンダードとスィートじゃ、広さから設備から何から何まで段違いじゃない。あんな感じに近い。 たぶん、このマンションに住んでいる住人達の中で、この最上階の部屋の中まで知っているのは、(住んでいる教授を除けば)オレ達と自来也先生ご夫妻くらいだろう。 自来也先生達も…というより、ツナデ様も最初は最上階に眼をつけていたらしいのだが、月々の家賃と維持費がバカにならないので断念したっていう話だった。 そこに『条件が合った』というだけでポン、と引っ越していらっしゃったのがミナト・W・ファイアライト教授だったというわけだ。 教授くらい金持ちなら、もっとすげえ超高級マンションにも住めると思うのだが、K大に通うことを考えたら、ここがちょうど良かったのだそうだ。 (というか、教授は商店街の雰囲気が気に入ったんじゃないかな、とオレは思っている。新旧入り乱れた、いかにも地元っぽい感じが) そう、教授の実家はアメリカの資産家で、ご本人も素晴しい経済力をお持ちなので、所謂セレブ様なのだ。 スレンダーな見た目を裏切る健啖家(単なる食いしん坊とも言う)で、美味いものを食う為には金を惜しまない。 だが、最高級品しか口にしない、というわけではなく、縁日のヤキソバでもコンビニのガリガリ君でも喜んで食べている。(ついでに大腸菌なんてモノともしない鋼鉄の胃袋の持ち主だ。ハラ壊したコトなんてないんじゃない?) たぶん彼は、好奇心が旺盛で、尚且つ物好きで変わり者なんだと思う。 でなきゃ何でこんな所で大学の先生なんかやってんだっての。 勝手知ったる他人の家…ではないが、ここはオレの職場でもあるからして、合鍵も(教授の厚意で)持っている。 連絡済みの時は勝手に開錠して入っていい、ということになっているので鍵を開け、玄関に足を踏み入れた。 「こんにちはー、お邪魔しまーす」 「お邪魔します」 「はぁい、いらっしゃい。どうぞー」 こういう美形は何着ても似合うんだろうな。ラフな白いシャツと薄墨のコットンパンツが憎いくらい爽やかによく似合っている。 「さっき電話して頼んでおいたから、もうすぐ来ると思うよ、ピザ。座って待ってて」 「はい」 豪勢な作りになっているとはいえ、そこは日本のマンションだ。 靴を脱いで屋内に入ることを前提にしたつくりの玄関になっている。教授も、欧米式に部屋の中まで土足、という習慣を持ち込もうとせず、ちゃんと三和土で靴を脱いでいる。 のみならず、イルカと同じで裸足でいるのが好きらしくて、靴下もすぐ脱いでしまうし、スリッパは冬の寒い時くらいしか使っていない。 来客用のスリッパも一応用意してあるけど、それを使ったことがあるのはたぶん、オレの父さんだけだと思う。 イルカは、持参したデザートを教授に向かって差し出した。 「教授、デザートに蜜豆作ってきたんですけど。冷蔵庫、お借りできますか?」 イルカの差し出した袋を、教授は丁寧な手つきで受け取った。 「ミツマメ? わざわざ作ってくれたの? ありがとう!」 「いえ、簡単なもので申し訳ないんですけど」 「とんでもない。いつも悪いね」 「いえいえ。カカシがいつもお世話になってますし」 ………こら。お前はオレの母ちゃんですか。 教授は冷蔵庫に寒天をしまいつつ、「それはお互い様」と笑って受け流してくれた。 イルカは目敏くキッチンの様子に気づいたようだ。 「何か作ってらっしゃったのですか?」 「ん? 大したものじゃないよ。簡単なサラダ。ピザだけじゃ野菜が足らないからね!」 「お手伝いしましょうか?」と、イルカさん。 「ありがと。大丈夫だよ。野菜洗って、適当に切って盛り付けるだけだから。もう、出来る。この間、美味しいオニオンのドレッシング見つけてねえ、今ハマッてるんだ。ホラこれ」 「へえ、オニオンドレッシングですか。サラダ以外にもいけそうですね。俺もこの間、ちょっと珍しいの見つけましたよ」 教授とイルカは、サラダドレッシングについて情報交換をし始めた。この二人、こと『食』に関しては、興味の方向性が似ているらしい。もっとも、教授はあまりご自分では作っていないようだが。 さて、オレも何か手伝わなきゃな。 教授は、『ピザにはコーラだ!』という信念をお持ちの方だから、飲み物は当然コーラだろう。(ちなみにコーラは冷蔵庫に常備している) オレは食器棚からコップと取り皿を出してテーブルに並べた。ああ、ここんちも結構まともな食器が揃ってきたなあ。 引っ越してきたばかりの時、教授はマグカップ一個しか持ってなかったんだよな。 その時に比べると、随分と充実した台所になってきたものだ。感慨深い。 インターフォンが鳴ったので、近くにいたオレが代わりに出る。 「はい」 『コノハノハ・ピザでーす。お届けに来ました〜!』 若干、あがっているような上擦った声だ。大方、届けに来たら何だか立派なフロアだったんでビックリしたんだろう。いや、注文主が外国人名だからビビッてんのかも。 「ピザ屋さん? ちょっと待ってくださいねー」 教授がくるりと振り返った。 「あ、早かったね。カカシ君、悪いけど受け取ってきてくれる? サイフ、いつもの引き出しに入ってるから」 「了解です」 オレは教授のサイフ(もちろん、これはメインのサイフではない。食費・生活雑費用のサイフなので、カード類なんかは一切入っていない)を手に、玄関に出て扉を開ける。 「はい、ご苦労様です。お幾らでしょうか」 届けに来たピザ屋のお兄ちゃんは、オレが日本語で応対したのでホッとしたようだ。 「はい、ええっと…一万六千九百五十円になります」 オレは思わず聞き返してしまった。 「は? い、一万六千……?」 「九百五十円っす。あの、Lサイズで五つ、ご注文頂いてますので………」 えるさいず、いつつ。 ―――相変わらずだな、教授。そんなに食えるのか………食うんだろうな。ヤレヤレ。 それにしても、日本のピザって何故こんなに高いんだろう。 「あー、ハイハイ。わかりました。ちょっと待ってくださいねー。…一万七千円でお釣りあります?」 「はい、あります」 まいど〜、と頭をペコリと下げ、ピザ屋のにーちゃんは帰っていった。 ピザもLサイズ五枚ともなると、結構な重量だな。 箱を開けてピザをテーブルに出していると、サラダを運んできたイルカが眼を丸くする。 「………え? こんなに?」 コーラと烏龍茶のペットボトルを抱えた教授が、あはは、と笑った。 「メニュー見てたら迷っちゃって。それでも頑張って絞ったんだよ? 一枚の上に何種類かのトッピングが乗ってるメニューもあったけどね。まあ、一人だったらそういうのもアリだろうけど、今日はカカシ君とイルカ君がいるし! …あ、でもフライドポテトとかオニオンリング、頼むの忘れちゃった。あった方が良かった? ポテト」 「いえ! これで十分です!」 危ねー。忘れてくれて良かった。これにサイドメニューまであったら、マジ食いきれないよ。 「じゃ、冷めないうちに食べようか」 ハイ、とオレとイルカは声を揃えて返事をした。 車輪型のピザカッターでさくさくとピザを切り分け、各々が好きなピザを皿に取る。 「色々あるけど、やっぱりマルゲリータは外せないよね〜。基本だよ」 「これ、パイナップル? あ、意外とイケますね。うん、美味い」 「こっちの、チーズが凄いですよ」 などと感想を言い合いながら、あっちこっちに手を出す。 うーん、ピザがいっぱいある所為か、何だかパーティみたいだね。 そこでふと、オレはネットで見た話を思い出した。 ピザのフチ部分を残す事に関する質問が、とあるトピックスで挙がってたんだ。 それに答えている人達の中に、自分は当然残す、と書き込んでいる人もいて―――オレはピザのフチを食い残した事なんか無いし、一緒に食べていてそんな事をやるヤツにもお目にかかったことがないので、ちょっと驚いたんだよな。 「ねえ、先生。この間ネットでピザの話を見たんですけど」 「うん?」 「この、ピザのフチ部分って、本来残すものなんでしょうかね?」 へ? と教授は眼を見開いた。 「僕は残さないけど。何で残すの?」 いや、教授が残さない派なのは、一目瞭然なんですけど。さっきからキレイに全部召し上がってますもんね。 オレは、ネットで読んだ話を説明する。 「………で、残す派の人の説によると、あそこはマズイし、持つところだから食べなくていいのだとか。アメリカじゃそうしている人も多いとか何とか………」 教授は眉根を寄せた。 「ん〜? フチが焦げちゃって黒くなっているとかいうのなら、わからなくもないけど。持つところだからっていうのは、理解出来ないね。アメリカでも、少なくとも僕の周囲にはいなかったな」 イルカも頷いた。 「ですよね。別にフチだからって別の生地使ってるわけじゃないだろうし。同じピザなのに、フチだからって食べないのは勿体無いですよ」 「それに、手で持ったところを食べないって言うなら、サンドイッチやおにぎりはどうなるの。スナック菓子やお煎餅なんかも、普通手づかみで食べるのにね。変なリクツだなあ」 ―――ごもっともです。 「たぶん、単なる好みの問題じゃないかと思うんですけどねー。具が乗ってないところは硬くて味も無いからイヤとか言う人もいましたし。…でもオレ、ピザのフチを残すなんて考えた事も無かったから、軽〜くビックリっす。だって勿体無いじゃないですか。食えるのに」 ハハ、とイルカが笑った。 「パンの耳、落とした時なんかも捨てずに食うものな、ウチ」 「そーそー、油で揚げて、砂糖まぶしたのとかウマイよね。パンの耳」 田舎じゃ、動物の餌にもしたけどね。 へー、と教授が感心した声をあげた。 「パンの耳って、あの外側の茶色い部分でしょ? でも日本のパンって、クセが無くて食べやすいのが多いよね。柔らかくてしっとりしているし。耳の部分も美味しいと思うよ」 「基本、耳ごと食べますけど。場合によっては、落とす事もあるので。サンドイッチの時とか、フレンチトーストの時とか」 「なるほど。…まあ、ピザのフチに関しては、もうそういう習慣になっちゃてる人は、何も考えずに残すのかもね。ピザの種類にもよるだろうし」 「ああ、生地が厚いのもあるし、すっごい薄いのもありますよね。オレ、薄いの食いにくくて、丸めて食ったことあります」 教授は、ピザをつまみあげた。 「これは中間くらいなか。厚過ぎず、薄過ぎず。…僕は、ピザはファーストフードと同じだと思ってるから、手づかみだけど。ナイフとフォークで食べる人もいるしね」 教授は、ふと宙を睨んでからオレに視線を移した。 「………そういやさ、カカシ君ったら、あの事サクモさんにバラしたでしょ」 は? いきなり何のお話でしょうか。 「あのこと?」 「僕がハロウィン・パーティでやった悪戯」 「ああ! あのサンプル食品の事ですか。…あれ? 父さんに話しちゃいけないコトでした?」 パーティ料理の皿の中に、合羽橋で注文したのであろう、よく出来たニセモノ料理が混じってたんだよね。 前に皆で合羽橋に行った時に、教授がそういう悪戯を企んでいるって話はポロッとこぼしていたから、バラすも何も無いと思うんだが。父さんも知っている話じゃないですか。 「この間、フランクフルトでサクモさんにちょこっと会う機会があったんだけど。…あれ、本当にやったのですか? …って、呆れられたんだよ」 そんな恨みがましそうな眼で見ないで下さい、せんせ。 でも父さんってば、まだこの人の性格を把握しきっていないのかね? いかにも好きそうじゃん、やりそうじゃん、ああいう悪戯。ねえ? 「う〜ん…呆れたわけじゃないと思いますよ。たぶん、先生の行動力に驚いたというか、感心したというか………だと、思うのですが」 「そーかなー…でも、口調がそういう感じじゃなかったような………」 教授は眉根を寄せ、つまみあげたピザをもぐもぐ、と口に押し込む。 教授にとって、父さんに呆れられるっていうのは、結構痛いコトだったのかしらん。 でも何で今いきなり父さんの話? ―――あ、もしかして。 「先生、ピザをナイフとフォークで食べたのって、父さんですか?」 「え? あ。…うん、そうだけど」 なるほど。ピザの話から、芋づる連想で思い出しちゃったんですね。 「そーか、父さんってピザをフォークで食べる人なのか。へー………」 イルカが唇を綻ばせる。 「場合によりけり、なのかもな。指先を油で汚したくない時だってあるだろうし。俺はあの人、そこら辺は柔軟な人だと思うよ。…例えば今、ここで一緒にピザを食べていたら、自分だけフォークを使うような事はしないような気がする」 言われてみれば、そうかもしれない。 「あは、そーだね。皆が手で食べてたら、やっぱりそうするかも」 クスクスと教授が笑う。 「じゃあ、今度サクモさんがこっちに来たら、ピザパーティやろう。僕は、ピザは絶対手づかみの方が美味しいと思うんだよね」 それにはオレも同意だ。 「そうですね。ピザはやっぱ、手づかみだとオレも思います」 んで、フチまで食うのだ。 イルカと教授と父さんと、オレ。 四人で色んなピザを囲む昼下がりか。 家族団欒ってワケじゃないけど、平和でいい光景じゃないか。 うん、楽しみだ。 「そういや、ピザのサンプル持ってましたよね、先生。ダメですよ? 悪戯したら」 教授は一瞬キョトンとしたが、やがてニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。 「………………さてね?」 「ちょっと、先生………」 「冗談だよ。これ以上サクモさんに呆れられたくないからね。やるなら、別のサプライズを考える」 あああ、イカン。教授のどこかのスイッチを押してしまったのか? オレのバカ。 何を企み始めたのか、教授は実に楽しげだ。 ―――ま、いっか。 彼が、父さんやオレ達に害があるサプライズをやるわけがないものな…………………たぶん。 信じていますよ、先生。 |
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突発的に書きたくなった、彼らの日常風景。 2011/6/10 |