お年玉

 

―――ああ、遠くで除夜の鐘が鳴っている……

イルカはぼんやりと小さく聞こえる鐘の音を聞いていた。
何となくそうなりそうな予感はあったが、大晦日から元旦に日付が変わった時、彼は素っ
裸で恋人と抱き合っていたのである。
イルカの下で、カカシが上気した顔で微笑んだ。
「イルカせんせ、あけましておめでとー」
「…おめでとうございます……」
イルカは少々上擦った声で何とか挨拶を返す。
「今年もよろし…くって…ッ…あ……そんなに締めつけちゃ…ッ…」
「はーい、今年もよろしくねー」
ぺろ、とカカシは上唇を舐める。
「じゃあまあ、年も新しくなったし! お年玉あげますねー? あ、ポチ袋はなしで勘弁
ね〜入らないからさあ、あはは…」
ああ、やっぱり下ネタだったか……
イルカはそっと心の中で目頭を押さえた。
いや、イルカもまだ若いし、気持ちのいい事は大好きである。
下半身だけが勝手に暴走した事も一回や二回ではない。
だが、何も正月から―――
「イルカはマグロやってていいよー。オレがやったげっから!」
…ああ、カカシ先生ったらとっても楽しそう…もしかして、俺は「もらう」んじゃなくて
「あげる」羽目になるのかもしれない…などとイルカが密かに嘆息する間にも、カカシは
器用に身体の位置を入れ替えてイルカの上に乗っていた。
「ふっふっふ。…こういうのさあ、イルカ先生は好きじゃないかもって思って今まで試さな
かったけど、お正月だもんねえ。あ、最初のエッチ、姫初めって言うんだっけ? 特別に
ご披露しましょう。…色街の御姐さんに教わった秘技! 一発昇天間違いなしですよお」
きゃああああ、とイルカが声にならない悲鳴をあげ―――

百八つの煩悩を払うはずの除夜の鐘が遠くで虚しく消えていった。

ちなみに、朦朧としたままのイルカの作った雑煮が彼らの口に入ったのは、元旦も夕方近
くになってからの事である。




そして、もう鏡開きの頃になってようやく、イルカは台所の引き出しの中に小さな可愛ら
しいポチ袋を発見した―――

 



 

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