+++ ぽちたま +++

  

最近イルカ先生『達』はデコをつき合わせるようにひっついて、
何やらヒソヒソコソコソしてやがる。
………ふうん、仲いいのねー……
ま、言ってみりゃ同じ人間だし?
仲がいいと言うか意気投合してもちぃっともおかしくないんだ
けど。
……オレの方はね。
ジェンダーの壁はあまり無いよーな気もするんだけど。ほら、
何せ彼女の気概がオトコらしいからさ。でも、何せ相手は一応
オンナノコですから。しかも、ダンナつきの。
あんまりベタベタ出来ないっつーか、やっぱね、距離はわきま
えないとイカンよね。
ホントはさ、オレよりも華奢で柔らかそうな彼女をうりゃうり
ゃっともっともっと撫でくりまわして可愛がってみたい誘惑に
かられるんだけどね。手触りいいしねえ、女の子は。
この感覚は異性に対するスケベーなモンじゃなくて、可愛い犬
コロをつい撫でて抱いてみたいのと同じなんだけど…実際やっ
たらキレるよな。……彼女じゃなくて、ダンナの方が。

「いるか先生っ」
風呂から帰ってきたらしい彼女が機嫌よくパタパタと部屋に入
ってきた。
ふふ、何だかなァ。夫婦になっていても『いるか先生』って呼
ぶのが可愛いね。オレ達もさ、どんなに仲良くなってもつい敬
語で話をしてしまうんだけど。ソレと同じかな。
彼女は部屋に入ってきた勢いのまま、イルカ先生の腕に抱きつ
いた。
あの〜……そっち、違うよ〜? かかしちゃん。
彼女はすぐに間違いに気づいたらしい。
「ご、ごめんなさい」と赤くなって、自分のダンナの方にくっ
つき直した。
イルカ先生は「いえいえ」と満更でもなさそうに笑っている。
コノヤロ。
………んー? でもイルカ先生達ってソックリだよねえ。
抱きついた感触の違いで、すぐに区別がつくもの? あっちの
いるか先生ももう腕吊ってないから見ただけじゃ絶対区別つか
んのよね。だってチャクラじゃこいつらの差はわからんし。
「……ねえ、イルカ先生達」
「「何でしょう」」
ほれ、返事もユニゾンで返ってくるし。
「……ちょっと、オレもいい?」
何がですか? という問いかけは無視して、まず自分の方のイ
ルカ先生にガバッと抱きついてみた。………ふむ。
次に、お客さんの方のいるか先生に同じように抱きついてみる。
「「………何してんですか、あんた」」
……だからユニゾンで呆れた声出すなってば。
オレはかかしちゃんにニッコリ笑いかけた。
「かかしちゃんって感覚繊細なんだねえ。…オレ、抱きついた
感覚だけじゃイルカせんせの違いがよくわかんないわ。……そ
の後の反応が違うから区別はつくけど」
う〜ん、と彼女も首を傾げる。
「……そこら辺は……何となく? かなぁ……」
いるか先生も首を傾げてから、まだひっついていたオレを軽く
抱き返してくれた。
「ははは、やっぱ全然違いますねえ。かかしさんとカカシさん
は」
「そりゃそーでしょ」
男と女だよ? 背丈も体格も全然違うしさ。
イルカ先生は興味ありげな顔でいるか先生に訊いている。
「…ちなみにどれくらい違うもの?」
あー、自分でかかしちゃんを抱いて確かめるわけにはいかない
もんね。腕に抱きつかれただけじゃ全体の感触はわからんし。
「そうだなあ……感覚的には中型の犬と仔猫くらい差があるよ
うな気が」
オレはかかしちゃんと顔を見合わせた。
オレがわんこで。
彼女がにゃんこ?
何となくわかるよーな、わからんような。
その直後の彼女のまるで他意の無い「抱いてみればわかるんじ
ゃない?」という無邪気な発言に、野郎どもは全員赤くなった
顔をてんでに背けた。

ああ、かかしちゃん!
キミのその発言は……えっちぃ意味じゃないってわかってんだ
けどね。
……って、言ったそばからウチのイルカせんせに抱きついてる
し!


ああ、いるか先生。
……キミの苦労が少し分かった気がするよ……

 
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これは『CROSSーOVER』でも結構終盤の方のエピソード(?)でしょう。
かかしちゃん、カカシ先生とイルカ先生に対しては無防備。
ダンナがちょっと心配してしまうほど無防備。

(05.08.28)