イルカは温泉好きだ。
だが家風呂も好きのようだ。
いや、『大好き』なのかもしれない。
一度入ると結構長風呂。
そういやあ、あいつガキの頃からプールも大好きだしな。
『イルカ』なんて水棲動物な名前の所為だろうか。
ま、風呂とプールは違うけどさ。
女じゃあるまいし、いったい中で何しているんだかと思って覗
いてみることにした。
もちろん、コッソリ覗くなんてイヤラシイ真似はしねえぞ。
あ？　本人に聞けばいいだろうって？
…………現場を見たいんだよ。悪かったな。（……充分ヨコシ
マな気もするが、ソレは置いておいて）
「イルカー」
一応、風呂場の扉をコンコン、と叩く。すりガラスの向こう側
はぼんやりと影が見える程度。だが、あいつが浴槽に入ってい
るってコトくらいわかる。
「何だあ？」
扉越しだと、声がこもってよく聞こえねえな。
オレは扉を開けて風呂場を覗いた。ちゃんと口実も用意してあ
る。男同士だし、ガキの頃からしょっちゅう一緒に風呂入って
いる仲なんだから今更なんだけどな。用もないのに風呂場覗く
のって変じゃねえかと思ってさ。
「あのさあ、ウチ蚊取り線香なんてあったかなあ」
……イルカは、湯に浸かってラジオ（風呂用）でナイター中継
を聞きながらのんびり歯を磨いていた。
半身浴ってやつ？　あー、いっつもこんなコトしてやがるのか。
時間かかるわけだな。
ちなみにオレはカラスの行水ってヤツだ。頭と身体の汚れが落
とせたらそれ以上風呂場に用はねえ。冬場は暖まりたいから湯
船にも入るけど、夏はシャワーだけで済ませちゃうんだよな。
「蚊取り線香？　蚊、いたのか？」
「いや、気のせいかもしれないんだけどさ。何か耳元であのプ
〜ンって音がしたみたいな気がしてさあ…」
「……ふうん？　んー、捜せばあるかなあ……最近使ってない
からなー。あ、でもあるとしても例の渦巻きに火をつけるヤツ
だぜ？　電気のは俺持ってねえから」
「えー？　う〜ん、アレかあ。オレ、あの匂いちょっと苦手だ
な〜…わかった、今度安売りしている時にでも買うわ。電気の
ヤツ」
蚊取り線香は口実だったが、オレはマジに電気蚊取り線香購入
を検討し始めた。あの渦のはなんつーかノスタルジックでご風
情あっていいけどね。あのニオイとケムリは正直むせるんだよ
なー。
「カカシ」
風呂場の扉を閉めようとしたオレをイルカが呼び止める。
「ん？」
「お前、風呂は？」
「んー、お前出たら入るよ〜？」
イルカはくいくい、と指で「おいでおいで」をした。
「入って来いよ」
………えーと、それは『お誘い』かしら？
「洗ってくれんの？」
「……いいよ。洗ってやる」
ヤツは爽やかとは言い難い笑みを浮かべた。……ナニ考えてま
す？　イルカさんたら。
あ、ちょっとドキドキ。




その後、オレは本当に『洗われ』た。
頭の天辺から足の先まで、そりゃあもう全部。徹底的に。
洗車された車の気分。
いや、トリマーに洗われた犬に近いかも。

………色気を期待したオレがアホでした。
でもアレね。
全身シャンプーをやってもらうのがこんなに気持ちいいとは思
わなかったなー。
これって、イルカに洗ってもらったからなのかなあ……なんて
風呂上りにベッドの上でボケッとしてたら、当たり前のように
押し倒された。

せっかく洗ったのにまた汚れるぜーって言ったら、また洗って
やるってさー。


………も、どうにでもしてｖ

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青菜、「お風呂で歯磨きをする」派です。
血行がいい時に磨くと歯茎にもいいそうです。洗面所で磨くよりも落ち着いてゆっくりと
磨けるから丁寧に出来ますし。

大学生のイルカさんはお風呂で色々するのが好きらしいです。
雑誌持ち込んで半身浴しながら読むとか。
簡易リラクゼーション空間。

(０５．０６．１１）