+++ ままとも +++
失礼。 突然何の脈絡もなく、このような場に出て参りましたので自己紹介 させて頂きます。 わたくし、夕顔と申します。フルネームは卯月夕顔。 ご記憶にありませんか? ちゃんと原作に登場するキャラなんです けど……ほら、暗部の。……思い出して頂けましたでしょうか。 特にストーリーに絡むわけでもなく、出てきた意味がよくわからな いキャラのクセに無駄に美人だと言われた夕顔です。あ、美人って 別に私が自分で言ったわけじゃないんです。 他の方がそう仰ってくださって…自惚れているわけでは……コホン。 ええと、そんな事はどうでもいいですね。 実は、最近とても驚く事があったんです。 私、実は人妻でして…(名前が旧姓なのは、その方が通りがいいか らというのと、主人の苗字がどうも私の名前と合わないので、普段 はそう名乗っております。お察しください。)…子供がそろそろ一 歳になるので、保育園に預けて職場復帰をしようと思ったのです。 もちろん暗部ではありませんよ。乳児を抱えているくノ一に暗部任 務は酷ですから。 その日、職場復帰して必要な部署に挨拶回りだけして、私は子供を 迎えに保育園に参りました。 そうしたらその保育園で……!! 思ってもみない御方とママ友になってしまったのです……… 「……夕顔? やっぱり夕顔だ。久し振りだねー」 「え?」 どなたでしたっけ……この銀髪美人の方……声はとてもよく知って いるような……? でもまさか……… 銀髪美人さんは、クスクス笑って私の耳元に囁きました。 「……オレだよ、オ・レ! ……カカシだってば」 ………えぇえっ? カカシ先輩?? やっぱり先輩ですか? 思わず私は表情を引き締めました。声も自然と周囲を憚るように小 さくなります。 「先輩…まさか、この保育園……何か問題でも?」 だって、天下の写輪眼のカカシが女装までして保育園に潜入任務っ て……いったい何事かと思うじゃないですか。つい身構えて訊いて しまった私を先輩は咎めもせず――― 「やぁだ。任務じゃないよー。この保育園ね、オレの子も通ってる の」 はい??? 私、先輩のお言葉が脳みその上で滑って何処かへ行っ てしまったようです。意味がわかりませんでした。 「……今、何て仰ったんですか?」 「だから、オレの息子達もここでお世話になってんのよ。…そうい や夕顔、ハヤテと入籍したんだってねー! おめでとう」 「……あ、ハイ。ありがとうございます」 ええ、実は恥ずかしながら出来ちゃった婚で―――って、すみませ ん。私、話が全然見えないのですが。カカシ先輩の息子さん達が同 じ保育園……? だけならともかく、何故先輩が女装?? 混乱している私をよそに、先輩は完全に世間話のノリです。 「夕顔の子供って男の子? 幾つ?」 「あ、いえ…女の子です。やっとひとつになったところで…」 「あは、じゃあウチの下の子よりちょっとお姉さんだね。あー、い いなあ。女の子かー。夕顔に似てたら美人だね、きっと」 「いえ、どっちかと言うと、彼に似たかも………」 カカシ先輩は「えっ」て顔して……… 何ですかその「可哀想に……」って! ウチの人だって、顔色はあ まり良くないけど別に不細工じゃないんですよ? ……あ、それどころではありません。私、まだ疑問符だらけです。 「………先輩……つかぬ事をお伺いしますが………何故、先輩の奥 様ではなく、わざわざ先輩が女装して此処にいらしているんです? 私、先輩が結婚なさった事も知りませんでした。差し支えなければ、 お聞かせくださいますか?」 先輩はニッコリと微笑んで頷いてくれました。 「………もちろん。そのつもりで声掛けたんだから」 その後の私の衝撃はお察しください……… 私、月光ハヤテというれっきとした恋人(現在は夫)がありながら、 カカシ先輩にも憧れていたのです。ここら辺の心理は、女性ならば おわかりでしょう? 恋とは呼べないけれど尊敬と憧れの混じった 淡い想いというものです。 それが………その先輩が……じ……女性………しかも、既に人妻で 子持ち。 ダンナ様があの、アカデミーのイルカ先生………っていうのも充分 衝撃的です……先輩。 何がどうなって木ノ葉の宝玉である貴方とあの誠実だけが取り柄の ような殿方がご夫婦になられたのでしょう……事実は小説よりも奇 なり、とはよく言ったものです。 しかも、その『秘密』を何故私に打ち明けたかというと、事情を承 知の上フォローしてくれる人間が『ママ友』の中にもいたら助かる からって………左様ですか。 ……私、少し脱力しました。 そしてカカシ先輩は涼しい顔でこう付け加えるのです。 「オレも、夕顔が暗部だってのは黙っているからさぁ……お互い様、 お互い様」 そりゃあっ………私だって、他のママさん達に元暗部だって知られ たらマズイです。引かれてしまいます。くノ一だというだけならと もかく、さすがに暗部は………でも、カカシ先輩の秘密と『お互い 様』なのかどうかは疑問のような気がしますが。 でも、「良かった〜。お互いフォローし合おうね」なんてニッコリ されたら……何も言えません。だって、先輩ちっとも変わってない んですもの。女性だとわかっても、やっぱりステキです。 それに、私を信用してくださったのは嬉しいですし。 ええ、先輩! 私、絶対に秘密を口外したりしません! 天地神明木ノ葉の英霊に誓いますわ!! そして敬愛する先輩には『フォロー』の必要があると私が悟ったの は次の瞬間でした。 「それにしてもハヤテの野郎、夕顔みたいな別嬪さんを嫁さんにす るなんてなあ。うまい事やりやがって」 ………ああ、先輩………そのセリフは普通男性が口にするものです ………(涙) +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ カカシの後輩、美人暗部の夕顔さん登場。(初登場が小ネタってあたりが不幸……) ハヤテの恋人らしいですね。慰霊碑のシーンではてっきりハヤテのお姉さんだと思って ました。(笑) この時点では大蛇丸による木ノ葉崩しはまだです。(原作とは違う時期に中忍試験が行わ れるので)だからハヤテも生きていますし(殺す予定はないですけど)夕顔さんと結婚もして もらいました。 ………夕顔が人妻子持ちってのは………カカシが女で人妻子持ちというとんでもなさに比べ たらこの程度何てこと無いですよね!!(…涙) 『カカシ先輩』って響きが素敵。 (05.09.28)
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