+++ こどものひ +++

  

あー? 何だろうね、コレは。
何かさー、ちょーっと前までこんなん想像したこともなかった
よ、オレは。こんな絵に描いたような平和な光景ってのは。
ここは、縁側。
お日様が優しい感じ。春だねえ。
縁側に腰掛けてぼーっと庭なんぞ眺めていると、アタマもシリ
もぽかぽかしちゃって暖かい。
オレのすぐ隣には子供が眠っている。
座布団の上でお昼寝中。
とても安らかな可愛い寝顔。
生まれたばかりの頃は、少し色が薄いような気がした髪も最近
濃くなってきている。やっぱりイルカ先生みたいに真っ直ぐで
艶々の綺麗な黒髪になるのかな。だといいな。
そして、オレは膝の上にいるもう一匹に眼を落とした。
まだこの世に生まれてから1年にもならない赤ん坊。
これも可愛い。
可愛いんだが。
…………なんでコイツ、こんなにオレにソックリなわけ?
髪の色でしょ、眼の色でしょ、それからツラ構え。
ツムジの位置までおんなじよ。
イルカ先生の遺伝子はドコ?? ねえ。ドコ行ったのよ。
このままだとコイツ、マジにオレの男版になりそうな嫌な予感。
アスマなんぞ大笑いしながら「細胞分裂でもしたのか?」とき
やがった。
単細胞生物か? オレはゾウリムシかよ。
せめてクローンとか……同じか。
笑ってる場合じゃねえってんだ。
コイツがこのまま大きくなった場合、オレとの血縁関係を否定
するのはまずムリがある。
そして、イルカ先生の子供だって事も隠しておくのは難しい。
…………どーするよ…………
オレはため息をついた。
最初にバカやったもんだ。
こういう可能性を考えて、『芥子』はアスマじゃなくて『はた
けカカシ』の血縁者にしておきゃ良かったんだよなー…
ならコイツが『カカシ』に似てても不思議じゃなかったのに。
出自がハッキリしないオレに血縁者がいるって言う設定を誰も
思いつかなかったのは仕方ないけど、そこはそれ、無理矢理で
っちあげて『そういう事』にしちゃえば良かったんだよ。
もう、今更遅いけどね。

「ただいま戻りました。…どうしました? カカシさん。難し
い顔をして」
外を回って、庭からイルカ先生が帰ってきた。
「お帰りなさい! イルカ先生。…なんでもないです」
「そうですか? ならいいんですが。あ、コレおみやげ」
イルカ先生は大きさの割りにちょっぴりずしりとした感じの紙
包みを手渡してくれた。ほのかな甘い匂い。
「ありがとうございます。何? お菓子ですか?」
「柏餅ですよ。こし餡につぶ餡にみそ餡。迷っちゃいましてね。
結局、全部買っちゃいました。四人分」
オレは笑ってしまった。
十二個も買っちゃったんだ、この人。赤ん坊の分まで。
「チハヤはまだそんなに食べられないのに。チドリも」
「でも、無かったら可哀相だから。…余ったら冷凍しとけばい
い。後でオヤツに出来ますよ」
イルカ先生はオレの膝でウトウトしていたチハヤを抱き上げる。
「よーしよし。いい子にしてたか〜? お前も食おうな、柏餅」
イルカ先生はオレソックリの赤ん坊に愛しげに頬ずりする。
その光景がいかにも平和で、微笑ましくて。
何だか切ないくらいに幸せな気持ちになってしまう。
……いいか。
先の事を今から悩んだって仕方ないよね。
なるようになるだろ、きっと。
「カカシさん? 何笑っているんですか」
オレは首を振って立ち上がった。
「ナーイショ! …今お茶、いれますねー」
 
 
 
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1日遅れの子供の日。
小ネタのわりに結構重要な問題を提議しております。(笑)
イルカ先生はチハヤ問題をどうするつもりでいるのか。気づいてないわけないんですがね。
実は色々ロクでもない事考えている模様。(笑;)
でも出した結論は女房と一緒。
「なるようになるだろ」
…似たもの夫婦。
 
(05.05.06)