+++ ひとげのむ +++

  

「ねえ、チハヤ君」
アカデミーのくノ一クラスではその可愛さでちょいと目立って
いた女の子に声を掛けられた。おれは先にアカデミーを卒業し
ていたが、このコも卒業したらしい。ちゃんと額当てを持って
いる。何で頭につけないでハラに巻いてるのかはナゾだが。
「何?」
おれはちょっぴりドキドキする。
なんつーかね、結構好みのコだったりしたからさ。コレはもし
かしてもしかするかもっ…なーんてな。
「ねえねえ、チハヤ君ってさ、お兄さんいるでしょー」
おれの期待はものの4秒で砕け散った。
………何だ、チドリ兄かよ。チッ…やっぱ世の中そう上手くは
いかねえな。
このコもチドリ兄のファンなわけねー。何人目だ? クソ。
今度は何だ? ラブレターなら自分で渡しやがれ。
「……いるよ」
彼女は薄っすらと頬を染めて微笑んだ。
「やっぱりー? チハヤ君とは結構、歳離れているよね。大人
ーってカンジ」
チドリ兄とは二つしか違わんが? 兄貴、そんなにフケて見え
るっけ?
首を傾げるおれには構わず、彼女は眼をキラキラさせる。
「あたし、見ちゃったんだー! 街外れでガラの悪い連中に絡
まれていた女の人、お兄さんが助けてあげてたの。カッコ良か
ったなー…強くってさー……あっと言う間に4人よ。さすが
ねー」
「へえ〜…」
んー…まあ、チドリ兄ならそれくらい朝メシ前だわな。
「きっとチハヤ君も、もう少し大きくなったらお兄さんみたい
になるね。だって、ソックリだもんね」

……は?

「すらっとしてて銀髪で……」

………う。そ、それは……まさかっ……

「額当てナナメでさ、口布してたからあんまり顔は見えなかっ
たんだけどね。けど雰囲気チハヤ君に似てたから、たぶんお兄
さんだろーなって思ったんだー」
あううっ……やっぱり……
「ねえね、カッコ良かったってお兄さんに言っておいて」
彼女は無邪気に微笑んでいた。頬を上気させて。

「わ…わかった……」




……それは……兄貴じゃなくて……………オフクロだけどな。
おれは訂正する気力を失っていた。

恋敵がオフクロだなんて可哀相過ぎるじゃねーか、おれ。
兄貴の方がまだマシだ。

……おれの人生って………
 
 
 
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チハヤくんは12〜13歳くらいです。
カカシさんソックリなので顔はいい。故にモテるんです、実は。
何故か本人気づいておりませんが。ココらへんのニブさはイルカ譲り。(笑)
この頃のチドリくんは14〜15歳ですので、いきなり背が伸びたりしてオトナっぽくなって
きているので、余計弟はくやしいのだろーな。
ちなみにこの頃既にカカシちゃんは性別カミングアウトしているんですが、別に「女だ」と
触れ回っているわけではないので、男だと思い込んでいる人も少なからず・・・いや、結構
おります・・・

あ、「ひとげのむ」はカタカナにして読んでください。遺伝子の妙。(笑)
(05.03.02)