+++ えほうまき +++
さあ、何を入れようか。 こういうイベントは大好きだ。 節分にその年の恵方に向かって寿司の太巻きを食う。 要するに縁起かつぎだな。 でもホラ、この日はコレだっていう食い物があると『今夜は何食 おうか』と悩む必要が無くて助かるし? 上方から伝わってきたこの風習の由来を一応調べてみたが、ハッ キリした事はわからなかった。どうやら割と狭い世界での風習だ ったらしいが、『福』とか『願い事』とかいう言葉に弱い人間の 心理を見事に突いたこの慣わしは、商魂たくましい海苔業界の手 によって一般に普及した―――らしいが。 まあ、そんなコトはどーでもいい。 俺は寿司が好きだし、どうせなら美味いものが食いたい。 だから、出来合いじゃなくて自分で好きな具を巻いて食おうと決 めた。 卓袱台に紙と鉛筆を用意して、俺は寿司のネタを思い浮かべた。 「……先ず、かんぴょうにきゅうり」 小さく呟いて紙に書き込む。 「卵焼き。ちょっと甘め。凍り豆腐」 俺の後ろでマグロのように転がっていた物体が声を出した。起き てやがったか。 「それからツナと、カニカマ」 「………マヨネーズつきですか、カカシ先生」 「うん」 う〜ん、太巻きって言うか、サラダ巻きだな、それは。…まあ、 いいか。 「トリの照り焼き」 「…………そりゃ美味そうですが。直径何センチの海苔巻作る 気ですか? これは切らないで丸齧りするんですよ? 口に入ら ないでしょうが」 ちまちま齧ったら中身がこぼれるしな。ここは一気に口に入れら れるサイズにしないと。 マグロは起き上がり、口をあーっと開けてその前に両手を持って いった。そして、何かを握るような仕草をし、その『何かを握っ た』状態の丸めた手を俺の前にかざしてニッコリと笑った。 「コレくらいなら入りますよぉ。ホラ、測る?」 ………カカシせんせえっ…その今のポーズはワザとですか天然 ですかっ…… 今のでイケナイものを連想した自分のアタマが呪わしい。 ああ、穢れているってばよー…(何故ナルト言葉)悲しいぜ。 俺は赤くなったりしないように自分の状態を精神力で何とか抑 えた。 「後、豆まきですよねー。イワシはやるんですかー?」 んふっっと可愛らしく(?)カカシ先生は笑っている。 クソ、やっぱりわざとだな、このマグロ。 俺も何とかニッコリ笑ってみせた。 食う時はあれだ。 今年は西南西だったか? 恵方とやらは。 お互い同じ方向向いて食うからカカシ先生の口元を見ずに済 む。 メシ食いながらムラムラするのもナンだ。 さて、何を願いながら食うかなあ。 無病息災、健康第一。 でもやっぱり願う事はこのマグロの事なのだろう。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ・・・・・・『小ネタ』じゃなくて、『下品ネタ』コーナーだったのか・・・・・・TT すいませんすいません。 イルカ先生が何を連想したのかわからなかった清らかなお嬢さんは、親御さんに訊いたり してはいけませんよ。 ちなみに、今回イルカ先生が連発している『マグロ』は、ベッドの上でのカカシさんの状態を 言っているわけじゃございません。自分からのっかってくるマグロがどこにいる・・・(笑) えーと、やっぱり節分は太巻き寿司をイッキ食いですね! 最終的にはどんな寿司食べたのだかこのヒト達。 (05.02.03) |